「太っているけど健康な人」は本当にいるのか 心疾患になりやすいというリスクがある
あの人太ってるけど健康的だよね――。そんなふうに思わせる人が、ときどきいる。でも、そんなことが本当にそんなことがありうるのか。少しくらい太っていても、運動をすれば心臓発作のリスクは減るのか。
この問題は長い間議論の的になってきた。専門家は、運動にプラス効果があることは認めるが、「太っているけど健康的」という概念には疑問を投げかけることが多い。
そんななか、決定打ともいえる研究が、米心臓学会誌(JACC)9月号に掲載された。過体重または肥満の人は、現時点で疾患を抱えていなくても、過体重ではない人より心疾患になりやすいというのだ。
肥満だけれど、糖尿病や高血圧、高コレステロール血症はない人は「代謝的には健康な肥満」と呼ばれる。しかし今回の研究では、代謝異常があろうがなかろうが、肥満の人の心疾患リスクは変わらなかった。
正常な体重で代謝的にも健康な人と比べて、肥満に分類される人は脳卒中リスクがやや高く、冠動脈性心疾患リスクは約50%高く、心不全になるリスクは約2倍も高かった。同じように、過体重の人は冠動脈性心疾患リスクが30%高かった。
「要するに、代謝的に健康な肥満というものは存在しない」と、今回の研究論文の主筆者となった英バーミンガム大学医科歯科大学院のリシ・カレイアシェティ医師は言う。「肥満は良性症状ではない」。
身長と体重だけではわからない?
だが、批判派は納得がいかない。今回発表された研究は、英国の350万人分の電子カルテを10年間追跡調査したもの。しかしカルテだけでは、患者のライフスタイルまで把握することができず、食生活の幅広い影響を反映していないというのだ。
カレイアシェティらの研究は、体格指数(BMI)に基づき患者を分類している。だがBMIは身長と体重から算出されるから、筋肉と脂肪の量は考慮されていない。また、この研究では健康度すなわち運動量が考慮されていないと、批判派は言う。
だが、肥満者の心疾患リスクが高いことはほかの研究でも示されていると、米ジョン・オクスナー心臓血管研究所(ニューオーリンズ)のカール・ラビー心臓リハビリテーション・予防心臓部長は語る。