ウーバーの日本市場攻略が行き詰まったワケ ライドシェアに反発のタクシーと連携模索も
とはいえ、日本人の利用意向が低い最大の要因は、安価さや利便性が売りのライドシェアを試してみる機会が日本に存在しないことにあるのではないだろうか。
米国ではウーバーやリフトをはじめ、ライドシェアはタクシー以上に手軽な交通手段として普及し始めている。アジアではウーバーやマレーシア発の配車サービス「グラブ」が周辺アジア諸国に進出。現地のタクシー会社と提携したタクシー配車と、一般の乗用車を配車するライドシェアの両サービスを、国の規制や需要に合わせて提供している。こうした環境では、利用意向が高まるのも当然だ。
日本では政府の規制改革推進会議でライドシェア解禁の議論は始まっているが、今年5月に安倍晋三首相に提出された答申では、実現に向けた抜本策はなかった。ウーバーの日本法人と取引のあった関係者は、「消費者がタクシーとライドシェアを比較し、評価することは欠かせない。政府や自治体が動かなければどうにもならない」と規制当局に苦言を呈する。ライドシェア普及に関し、日本は諸外国から孤立する一方だ。
日本法人社長の退任が明らかに
ウーバーが日本市場での方針を転換する中、日本法人の高橋正巳社長の退任が明らかになった。高橋氏はこの3年、規制当局や取引先との交渉に当たってきた。退任直前の10月に、本誌のインタビューに「ライドシェアの議論が活発になる中で、前提は変わってきている」と手応えを語っていたが、結果が実る前に会社を離れることになった。ウーバーのエントウィッスル氏も、高橋氏の後任選任が今回来日した理由のひとつであると認める。
ウーバーの日本法人は、当面はタクシー業界との連携を進めることになるが、次期社長には業界や規制当局との対話を進展させるスキルが求められる。まずは実証実験や特区などを利用して、利便性を知ってもらうことが第一歩だろう。現在、東京以外の都市や観光地でも、同社のタクシー配車システムを導入するプロジェクトが計画中で、開始まで秒読みだという。
しかし、ライドシェアを警戒するタクシー業界に入っていくことは容易なことではない。システム導入を足掛かりに、狙いどおりにライドシェア参入に繋げるまでには、まだかなりの時間がかかりそうだ。
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