本音対談、若き起業家の「鈍感力」が凄すぎる 観客唖然「家がなかった」「1日で3億円流出」…
山田:それに、作ったシャツの支払い期日もどんどん迫ってくる。ネットでも売りましたが、アマゾンや楽天のような有名なところではなく、あまり知名度のないサイトで、しかもファクトリエというブランドなんて、誰も知らない。
ユニークユーザーが1、つまり自分だけ、という日が何日も続きました。それが2になり、3になり、と増えていったときは、本当にうれしかったです。
友達に買ってもらったりもしていたのですが、そのうち、「山田の電話を取るとシャツを売りつけられる」とうわさされるようになってしまいました。
ある日、オフィスビルの喫煙所に人が集まっているのを見て、そこで「シャツを買ってくれませんか」と営業を始めたんです。もちろん売れませんでした。そのとき、弱い自分がいるということに気づきました。「いらない」と言われて、そこで一歩も踏み出せない弱いやつだった。でも、後悔するくらいなら踏み出せばいい、と気合を入れました。
それから「無料着こなしセミナー」というアイデアを考え出し、そのアイデアをもって、いろいろな会社の人事担当者に手当たり次第に営業をかけました。このセミナーを通じてじわじわとシャツを売りました。行ったからには、10枚は売りたいと思って必死にやりました。週末はバイトをし、それでもおカネが足りないときは日雇い仕事をしながらの毎日でした。
池見:山田さんは完全自己資金ですよね。小売業、製造業を自己資金で回すというのはスゴイことだと思います。
山田:この先にまだ階段があると思って踏み出したら、その上の段が実はなかったという失敗はよくありますよ(笑)。
康井:あるある(笑)。でも、そういうものだよね、という鈍感力も必要ですよね。
山田:そうですね。あと必要なものはというと、健康だと思っています。僕は、月に一回、カイロプラクティック、はり、灸に行っています。これは、体をケアして、自律神経を落ち着かせるためです。僕は交感神経が働きすぎで、常にオン状態にあるんです。寝ても疲れがとれない。次の階段がないんじゃないか、というのが頭から離れなかったりして。
光本:失敗からのほうが学ぶことが多いですね。一度やってみると、その経験が次に生かせるから。
争い事は嫌い。でも大企業とのガチ勝負は「運命」
池見:『シュードッグ』では、オニツカの代理店からスタートしたナイキが、自分たちのブランドを作って、ライバルのプーマなどと戦っていきます。みなさんのライバルは?
康井:スマホ決済の業界で進んでいるのは、中国ですね。ライバルと呼ぶのがおこがましいレベルで圧倒的にすごい。だったら組んでしまおうと、昨年ALIPAYさんと業務提携しました。金融産業は大きな市場なので、いかにパートナーを増やしていけるかが重要だと考えています。
光本:私は、争い事が好きじゃないんですが、新しいことをやるたびに競合は出てきます。「STORES.jp」もそう。大手が無料で同様のサービスを出して、EC戦国時代のような状態になりました。こんな大手と戦うのかと震えましたが、これも運命だなと思いました。
自分たちで新しいカテゴリー、新しい市場を作って認知させていくのもいいですが、競合がいたほうが、市場ができていくスピードが速いということもあり、結果的に自分たちも成長できます。
山田:僕は、熊本の老舗婦人服店で育ちました。そこでは、すべてが工房から生まれていました。一方、ナイキのような企業は、マーケティングやブランディングによって、工房を凌駕するものを作ります。歴史の浅いアメリカという国が打ち出すブランディングに対抗して、いかに歴史と職人の技術をもってブランドを創り戦うか。僕はそこを考えています。
ヨーロッパのブランドは、工房でのものづくりから生まれています。たとえば、エルメスはフランス国内に3000人の職人がいて、職人ひとりが1つのバッグを丸縫いして刻印します。すると、それが修理のために若い職人の手に渡ったとき、その若者は「師匠の技術はすごいな」と思う。
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