38歳「マイナー漫画」に鉱脈を探る男の執着心

単行本を作るまでにこじらせた劇画狼の人生

2008年漫画の感想を書くブログ「なめくじ長屋奇考録」を開設(写真:筆者撮影)

余ったエネルギーを消費させるため、2008年漫画の感想を書くブログ「なめくじ長屋奇考録」を始めた。

「もともとコレクター気質なんです。珍しいモノを見つけたいのはもちろんなんですが、手に入れたモノを人に見せたい教えたいっていう気持ちが強いですね。自慢じゃなくて、純粋にみんなに面白いモノを知ってもらいたいという気持ちです」

初期は、『漫画ゴラク』や『漫画サンデー』に連載される一般漫画誌の中では独自タッチの漫画を紹介していたが、もっとより特徴的な漫画を紹介して、ほかの漫画紹介ブログとの差別化をはかりたかった。

何か面白いジャンルはないかと探していると、コンビニの雑誌置き場の端っこに置いてある、アダルト劇画雑誌とコンビニコミックを発見した。

アダルト劇画雑誌は1970~1980年代に人気があった成人向けの漫画雑誌だ。『漫画エロトピア』『劇画アリス』『漫画エロジェニカ』など何十冊も創刊されたが、時代とともに衰退し現在は『漫画ローレンス』など数誌を残すばかりになっている。

コンビニコミックはコンビニのみで売られる小さい判型の漫画雑誌で社会の裏側のネタやオカルトのネタなどを中心に掲載している。

「どちらも存在は知ってはいたのですが、認識していませんでした。ためしにアダルト劇画雑誌を覗いてみて衝撃を受けました。まるで深海で異常進化している魚を見たような気持ちになりました」

もう何十年も注目はされていないが、1970年代からめんめんと積み重ねられてきたガラパゴス的伝統がそこにはあった。昭和歌謡をもじったテーマタイトル、季節の行事(節分など)を強引に不倫につなげる展開、など一般漫画誌にはない魅力を見つけた。

「僕は人妻、熟女といったジャンルが好きだったわけではないんです。ただ漫画の中に積み重ねられた法則を見つけたかったんです。売られているアダルト劇画雑誌は全部購入してエクセルで表を作って管理しました」

アダルト劇画雑誌とコンビニコミックを中心に紹介する「なめくじ長屋奇考録」ははたして人気ブログになった。そして現在もブログは継続中で、劇画狼さんはいまだに販売される全アダルト劇画雑誌を購入しレビューし続けている。

マイナー漫画のジレンマ

マイナー漫画を紹介しているとジレンマにとらわれた。

「皆に勧めたい面白い漫画を見つけてもまず単行本化されません。それどころか連載している雑誌自体が次々に廃刊になっていきます。やっぱり口惜しいですよね」

ただ、この時点ではあくまでブロガーにすぎない。本を出版しようとは考えてもいなかった。彼が漫画の単行本を作ろうと決めたのは、ある1つの連載漫画に惚れ抜いた結果だった。

「三条友美先生の『人妻人形・アイ』という作品が本当に好きで、単行本になるのを心待ちにしていたんです。でも連載していた雑誌が休刊になってしまいました」

この作品はどうしても単行本にするべきだと思った。ただ最初に書いたように劇画狼さんはスポーツに明け暮れた人生を送ってきた人であり、単行本の製作はまったく知らなかった。コミケに行ったこともなければ、いわゆる“薄い本”を手に取ったこともない。

そこで編集に詳しい“友人”に相談することにした。

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