38歳「マイナー漫画」に鉱脈を探る男の執着心 単行本を作るまでにこじらせた劇画狼の人生

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そして現在のところの最新刊は、『もっと! 抱かれたい道場』(中川ホメオパシー)だ。こちらは『月刊ヤングチャンピオン烈』に『抱かれたい道場』として単行本にして2冊分連載された漫画だったが、単行本は1冊しか発売されなかった。

「三条先生、掟先生とは違い中川ホメオパシー先生は半分友人のような関係でした。3人(中川ホメオパシーは2人組)で頑張って営業用の名刺を作っている感じでしたね。本を完成させるだけではなく、発売記念のトークライブまでの流れを全部作りきりました」

三条友美先生の場合、掲載雑誌が休刊になったけれど他雑誌で復活した。中川ホメオパシー先生はイベントでリイド社の編集さんと出会い新連載が決まった。

渡せた印税の料金はお小遣い程度にしかならないが、単行本の発売は作家にとって金銭以上のメリットがあったと思う。

「自分の中のモチベーションがハッキリと見えました。古くてすでに亡くなってしまった人の作品を掘り起こして発売するのではなく、今頑張っている作家さんの本を作りたい。僕が作る単行本を、仕事の起爆剤にしてほしいんです」

単行本にできない漫画を紹介するために

もちろん劇画狼さんが気に入った漫画をすべて単行本にできるわけではない。そういう作品を紹介するため、リイド社のサイト「リイドカフェ」で「エクストリームマンガ学園」という連載を始めた。

劇画狼さんが選んだ短編マンガ作品を、紹介していく内容だ。とよ田みのる(『最近の赤さん』など)、児嶋都(『怪奇大盛!!肉子ちゃん』など)、呪みちる(『チェリーモーター・ブッチャードリル』など)などなど、エクストリーム(極端・極限)な個性を持つ作家の作品をたくさん紹介している。

劇画狼さんが選んだ短編漫画作品を紹介していく「エクストリームマンガ学園」(写真:筆者撮影)

そして「エクストリームマンガ学園」で紹介した『サイコ工場』(谷口トモオ)は、リイド社から『完全版 サイコ工場 A(アルファ)』『サイコ工場 Ω(オメガ) 』として発売された。単行本には監修として、おおかみ書房のロゴを入れてもらった。

「短編や読み切りでこそ力を発揮する作家さんはたくさんいます。掲載雑誌の版元から出せればベストだけど、もしダメなら『エクストリームマンガ学園』で紹介してリイド社から販売できないか聞いてみる。それでも無理ならおおかみ書房から出す。僕が好きな存命の作家さんをより輝かすことができる。地に足がついた活動になってきているな、と感じています」

ただし現在劇画狼さんが作っている単行本は、すでに亡くなっている人の作品だ。

2017年の3月17日、劇画狼さんの友人であり師匠である、白取千夏雄さんが亡くなられた。現在は、白取さんの自伝的作品を製作している。

「原稿ができかけているところで亡くなられました。波乱の『ガロ』時代を含めて、白取さんはこんなに面白い人生を歩んでこられたんだ!!というのを皆さんに伝えられるよう編纂作業を進めています」

尊敬する人の人生を、宝物にできる劇画狼さんはとても幸せだなと思った。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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