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2030年コンピュータはどこまで人間に迫るか 格段進化の人工知能がヒトの仕事を奪う日

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  • 齊藤 元章 スパコン・人工知能エンジン開発者
  • 井上 智洋 駒澤大学経済学部准教授
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齊藤:はい。それでも、なかには「シンギュラリティは絶対に来ない」と言う人もいます。ある政府の諮問会議のメンバーでもある著名な先生は、「シンギュラリティが来ることは、金星人が見つかるぐらいの確率だ」とおっしゃっていて、私は衝撃を受けました。

その一方で、「時間の問題はあるかもしれないが、シンギュラリティは絶対に来る」という方がだいぶ増えてきているように思いますが、シンギュラリティ、なかでも「技術的」な特異点に関して井上先生はどんな考えをお持ちですか。

井上:いま存在する人工知能は、ある1つの特化された課題しかこなすことができません。特に経済への影響を考えた場合、人間のようにさまざまな知的作業をこなすことができる汎用人工知能ができるかどうかということが、いちばんのカギになると思っています。

齊藤:同感です。

井上:ただシンギュラリティと言っても、さまざまな定義があるかと思います。人工知能がいったん人間の知性を追い越したら、どんどん差を広げていくというのが一般的な認識だと思いますが、そうはならないような気がしています。そもそも知性というものが単純に数量的に測れるのか?

私は2030年頃に、汎用人工知能ができると予想していますが、そのときの汎用人工知能は人間の知的振る舞いをぎこちなくまねる程度のものになると考えています。そのあともAIを人間に似せる作業がずっと続くと思っていまして、分野にもよりますが、人工知能が人間を追い越すというのはかなり難しいのではないかと考えています。

もちろん現在でも、囲碁や将棋などの特定の分野ではすでに人工知能がプロの棋士に勝っているので、そういう部分ではシンギュラリティがすでに起きていると言ってもおかしくはありません。でも、人工知能が人間の知性のすべてを追い越すかというと、そこは難しいのではないかと思うのです。

ただ、人間の知的振る舞いをぎこちなくまねるような汎用人工知能ができるだけでも、経済的なインパクトは非常に大きいと言えます。そういう汎用人工知能が2030年あたりから徐々に世に出るようになり、2045年頃にはかなり広がっているかもしれません。

その普及にもう少し時間がかかったとしても、2060年頃には、われわれが普段やっているような仕事はほぼ人工知能に置き換わり、人間はほとんどやらなくて済むようになると予想しています。

齊藤:なるほど。

人間が負けない「CMH」の領域

井上:私は人間が汎用人工知能やロボットに負けない「CMH」という3つの領域を挙げています。Cはクリエイティヴィティ(Creativity:創造性)、Mはマネジメント(Management:経営・管理)、Hはホスピタリティ(Hospitality:もてなし)で、この3分野の仕事はなくならないだろうと考えています。

ただ、こうした分野にも当然、AIやロボットは入り込んできて、人間と協業することはもちろん、ともすれば人間の競争相手になってしまう可能性もあるわけです。

齊藤:そうですね。

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【作曲家にとっては脅威】

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