子どもには「好きなこと」をやらせるべきだ 成毛眞氏が提案する「生き抜く能力」の磨き方

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この先すごい思想家が登場して、革命的なシステムを考えつくというようなことだってないわけではない。でも、いまのところは多少使い勝手が悪くても人類は、民主主義を選択せざるをえないのだ。

それに、日本の民主主義はそれなりに機能しているといえなくもないのである。格差が広がっているといっても、欧米諸国に比べればはるかに小さい。それは、富の再配分がそれなりにうまくいっているからなのだ。なにしろ日本というのは、所得税と住民税で所得の半分以上を国が持っていってしまう国なのである。さらに、ほかの先進国ではありえないほどの相続税まであるのだ。税率が高すぎて、どんなに資産があっても3回相続を繰り返すとゼロになってしまうのである。私の知るかぎり、共産主義国家でもここまで税金を取るところはないはずだ。

マイルドヤンキーは、イギリスのチャヴとは違う

日本では、格差の現状を説明するのに、ヒルズ族と地方のマイルドヤンキーというたとえがよく使われるが、海外の格差はあんなものではない。たとえばイギリスにはチャヴと呼ばれるブルーカラーの若者がいるが、収入も住環境も日本のマイルドヤンキーよりはるかに劣悪ときている〈『チャヴ 弱者を敵視する社会』(オーウェン・ジョーンズ)〉。

また、チャヴはそこからはい上がることのできない絶望的な下流階級だが、マイルドヤンキーは決してそうではない。彼らが地元から出ようとしないのは、ある意味そこに居心地のよさを感じているからなのである。自分たちの住む地域を愛し、貢献したいという意識が強いマイルドヤンキーは、閉塞感の中で反社会的行為を繰り返すしかないチャヴとは違うのである。

ところが、日本にはそういう若者たちに対し、「君たちも六本木ヒルズにオフィスを構えて、バリバリ稼ぐ成功者を目指せ」と余計なことを言う人たちがいる。私は、地方で身の丈に合った生活をするという人生だって全然悪いとは思わない。「若者なら上昇志向を持て、カネをたくさん稼ぐのがいいことなのだ」という一元的価値観こそが害悪なのである。

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