「日本版トマホーク」は今の憲法を逸脱する 敵基地攻撃には「憲法9条改正」が絶対条件
安倍首相が敵基地攻撃能力の保有について否定的な見解を示しているのは、同盟国・米国との関係や国内世論に配慮したものとみられる。
その一方、防衛省や自民党の国防族は前向きだ。自民党安全保障調査会検討チーム(座長、小野寺五典・現防衛相)は3月、敵基地攻撃能力の保有検討を政府に求める提言を策定した。その小野寺氏は防衛相に再び就任した8月、「防衛相として、提言を踏まえ、弾道ミサイル対処能力の総合的な向上のための検討を進めたい」と前向きな姿勢を示した。
「戦力」は「自衛のための必要最小限度を越えるもの」
政府は、憲法9条第2項が禁じている「戦力」とは、「自衛のための必要最小限度を越えるもの」との統一見解を示してきた。そして、「自衛のための最小限度」や「専守防衛」に合致させるために、「攻撃的兵器は持たない」との原則を確立した。このため、戦闘機を領空領海外に越えさせる空中給油機などの導入が長年認められなかったり、戦闘機から爆撃照準装置が外されたりする事態に陥った。政策判断として、北朝鮮のミサイル施設を攻撃できる長射程の空対地ミサイルや、トマホークなどの艦対地ミサイルを日本は保有してこなかった。
小野寺防衛相も8月10日の国会で、「攻撃的兵器の保有は自衛のための最小限度を超える。大陸間弾道ミサイル、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母はいかなる場合も保有は許されない」と述べた。
とはいうものの、北朝鮮の脅威が増すなか、政府与党内では2000年代初めから「敵基地攻撃論」が徐々に高まってきた。敵のミサイル基地を攻撃する「攻勢防御」能力を確保し、より強い抑止力を持つべきだとの主張が出始めていた。
敵基地攻撃能力をめぐっては、日本版トマホークを槍(やり)のように何発か保有しただけでは何の役にも立たない。具体的には(1)敵基地の所在や敵の攻撃着手の確認(2)敵の防空能力の無力化(3)十分な打撃力(4)十分な防御力――などが必要とされる。
1つ目の敵基地の所在や敵の攻撃着手を確認するためには、インテリジェンスが欠かせない。日本独自の早期警戒衛星(SEW)や電子偵察機の導入、統合監視目標攻撃レーダー・システム(JSTARS)、さらには自前の対外情報機関の設立などが求められる。
2つ目の敵の防空能力の無力化については、相手国のレーダー網を破壊する電子戦機や敵防空網制圧(SEAD)任務機などが必要になる。
3つ目の打撃力については、戦闘爆撃機やトマホークなどの艦対地ミサイル、遠隔地から攻撃するスタンドオフの空対地長距離ミサイルをはじめ、制空戦闘機や空中給油機などが必要になる。
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