「副業解禁」を一括りに論じてはいけない理由 生活補助と小遣い稼ぎでは意味が全然違う
逆に、社員が安心して好きな副業に取り組める会社のほうが、本業のほうでも社員はモチベーションや責任感が高まるようである。
現に私の知人が経営する会社でも副業をしている社員がいるが、本人は「明日は(副業があって)残業できないので、前倒して、必ず今日の定時までにこの仕事は完成させます」など、計画的に主体性を持って仕事を進めてくれている。これまで副業が原因で本業に問題が発生したことは無いと聞いている。
一昔前なら「仕事が優先だろ!」の一言で片付いたのかもしれないが、今のご時世、休日出勤や残業をしない社員を無責任だという前に、突発的に休日出勤命令や残業命令を出すような会社のマネジメントにこそ問題があるケースもある。
(4)本業スキルアップ型副業
「本業スキルアップ型副業」は、本業のスキルアップを目指して行う副業である。たとえば、法務部の社員が友人の開設した弁護士事務所で法律事務を手伝うとか、IT系の仕事をしている社員が他社での仕事を通じてプログラミングスキルの幅を広げるとか、副業で頑張ったことが本業に生かされる。
具体的な実例で言えば、副業をいちはやく解禁したことで有名になったロート製薬では、エンドユーザーの声を聞いて本業のヒントにつなげたいと、ドラックストアでの副業希望者が多かったということだ。
副業先の希望で最も多いのはドラッグストアだった。研究開発やマーケティングの部門に所属し、薬剤師の資格を持つ社員が「お客さんの生の声を聞きたい」と希望しているという(2016/6/14 日本経済新聞)。
このように、企業側と労働者側の利害関係が一致しているので、副業の中ではトラブルが発生することは少ない。一方で、企業側としては就業規則等で最低限のルールやガイドラインを明確化しておくことが必要になるだろう。
たとえば、ロート製薬では、「希望する副業内容を上司を通さずに直接人事部に申告し、人事部の面談を経て認められれば始められる。競合企業を利するような仕事でない限りは、厳密な審査はしない(2016/6/14 日本経済新聞)」という基準を設けているということだ。
いくら本業のスキルアップにつながるとはいえ、副業先の会社や自己が営む副業ビジネスが本業と競合になるようなことがあってはならないし、本業の守秘義務は守らなければならない。
「どっち付かず」で中途半端
(5)起業・転職準備型副業
「起業・転職準備型副業」は、将来は起業や転職を目指しているが、その準備段階としての副業である。ネットショップを開設して、ある程度の規模に成長したら会社を退職するとか、終業後や週末だけベンチャー企業の仕事を手伝って、納得がいけばそのベンチャーに飛び込む、といったような事例が挙げられる。
会社にとっても本人にとっても、ダラダラとこの状態が長く続くのは望ましくない。
確かに、独立するにしても一定の準備期間は必要である。しかし、会社としては、目の前の仕事をきちんとこなしてくれれば問題はないにしても、いつ独立するかわからない社員に対しては、要職を任せたり、コストをかけて教育研修を行ったりすることなどにも二の足を踏んでしまう。本人にとっても「どっち付かず」で中途半端になってしまう可能性がある。
長くても1~2年で結論を出すのが会社にとっても本人にとっても良いことなのではないだろうか。
5つのタイプそれぞれに事情は違う。企業側としては自社の社員がどのような目的で副業を行っている、あるいは行おうとしているのかを把握し、社風にあった副業支援制度の導入や労務管理を行う必要があるだろう。政府にも実態に即した法制度の整備を求めたい。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら