トラブル対応で株を上げる人と下げる人の差 最速で問題解決する人が実践する3つのこと

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私自身、メンバーから「今週は、ほかのものを後回しにしてこのタスクに注力したいです」と相談されても、そのタスクがどれくらい重要なのか、いま本当にそのタスクに注力しないといけないのか、ほかのことも含めた全体像がわからないとOKもNGも出せません。

また、ときおりメンバーに「あの資料、いつまでに作る予定?」と聞くと、「すみません! 急いで明日出します!」と焦って答えてくる人がいて、「別に急いでいるわけじゃないんだけどな」と思うことがあります。

こちらが求めているのはスケジュールの全体像。たとえば、「2週間後に完成予定で進めています。いま3日目で、だいたいの構成が出来上がりましたので、週明けくらいには一度ラフな状態で確認いただく予定です」と答えてもらえると順調かどうかがだいたいわかり、今後のチェックポイントや自分の空けておくべきスケジュールを考えることができるのです。

最速で問題を解決する3原則③ ムダに考えない

『複雑な問題が一瞬でシンプルになる 2軸思考』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

よく経営戦略で「選択と集中」が重要だということがいわれますが、これは思考においても同様です。「原則① 考える枠を決める」と「原則② 全体像をとらえる」で述べたように、情報が枠で整理されて全体像が把握できると、これまで雑多だった情報がすべてきれいに可視化されます。ごちゃごちゃに詰め込まれていた要素をすべて取り出し、表に整理して並べたという状態です。

考えるときは、そこから重要なものだけを「選択」し「集中」して掘り下げていきます。

このときいちばんよくないのが、なんとなく全部を考えること。完全に時間のムダです。1時間の思考時間を、ムダな検討にまで時間をかけるのか、効果の高い重要なことだけに費やすのか。それによって、仕事の成果が大きく変わってくるのです。

「思考の選択と集中」を考えるとき、私はよく「ぬり絵」のイメージを使います。いま考えるべきではない枠をグレーでぬりつぶすことで、枠の中で重要度の濃淡がつき、必要のない部分を考えなくて済むようになります。

たとえば図のように、東京、大阪、名古屋、福岡の売り上げデータについて考える場合。「売り上げの伸び悩みをどう解決するか」がテーマであれば、売り上げが伸びている大阪、名古屋については考える必要がありません。4都市を考えるよりも、2都市だけを考えるほうが、単純に時間は半分になります。反対に同じ時間を考えることに費やすならば、思考できる時間は2倍に増えるのです。


木部 智之 デロイトトーマツコンサルティング合同会社ディレクター

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きべ・ともゆき / Tomoyuki Kibe

横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了後、2002年日本IBM入社。数々の炎上プロジェクトの火を消し、エグゼクティブ・プロジェクト・マネージャーに。2018年よりパナソニックのソリューションビジネスの立ち上げに従事し、2020年最年少でパナソニックシステムソリューションズジャパン執行役員に就任。パナソニックコネクトカンパニー役員を経て、2022年9月より現職。人材育成にも力を注ぎ、社内外でビジネススキルに関する研修やセミナーを実施。主な著書に『プロジェクトのトラブル解決大全 小さな問題から大炎上まで使える「プロの火消し術86」』(KADOKAWA)、『入社1年目のビジネススキル大全 』(三笠書房)など。

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