介護離職シングルマザーがハマった貧困の罠 「振り返れば貧困を回避する選択肢はあった」

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川上さんは恵まれた家庭で育ち、責任感が強い。それが災いした。限界を超えて姉の介護を背負ってしまった。悪い言葉でいえば、責任感の強い川上さんのような家族の存在は、病院や余計なおカネを使いたくない自治体にとってはありがたい。

自立して生活ができないのは、同居家族ではない姉。介護休業は使えない。姉はマンションを所有するので生活保護は利用できない。家族の介護者は放置される存在なので、自分が苦しいばかりで、ずっと誰に相談すればいいかすらわからない状態が続いた。

今振り返ると、病院や自治体から電話がかかってきても「私は東京に家庭と仕事があるので無理です。行けません」と、姉を見捨てるしかなかったか。家族がいない状態だと責任は自治体となり、トラブルを起こせば、おそらく措置入院となる。

娘は、叔母の介護で混乱する母を理解した。1人で留守番をしながら勉強を続けて、超進学高の1年生になっていた。

【12月4日18時追記】 初出時、この箇所に<弁護士になりたいという夢があった。家庭に迷惑をかけないようお茶の水女子大学法学部に進学し、「頑張って司法試験を突破するから」と言っていた>との表現がありましたが、この内容は誤りだったため12月1日午前9時に当該箇所を削除しました。重要な訂正を行った場合には注記を行うことが編集部の方針ですが、漏れがあったことをお詫びいたします。

貧困の数だけ、子どもの夢は潰れていく

介護離職によって家計は破綻した。1年間以上世帯には収入がない状態で、子どもの貧困に該当する。

「結局、貯金も全部、蓄えはなくなりました。無一文に近い状態です。どうしても学費が払えなくなって、娘は高校1年から2年になる春休みに退学しました。現実を伝えたとき、泣いていたけど、文句ひとつ言わずに通信制の学校に転校してくれた。本当に娘には苦労をかけています」

高校退学する直前、川上さんは何度も学校に延納を頼んでいる。この1年間の家庭の事情を全部話して先生に頼み込んだ。

「学費はどう考えても払える状態じゃありませんでした。でも、学校から『辞めてください』とは絶対に言わない。どうしますか、どうしますかと、根拠ある支払い計画を求めてくる。なんとかして払いますではダメで、納得してくれません。時間をくださいというのもダメで、辞めますという返答を待っていました。結局、退学しますと言いました。先生たちはホッとした表情になっていました」

高校退学しても挫折することなく、アルバイトをしながら学費と自分の生活費を稼ぎ、お茶の水女子大学を目指した。順調に通信高校は卒業して大学受験した。第1志望は合格にはならなかった。難関私立大学に合格し、貸与型の奨学金で進学した。しかし、1年で断念している。

「今は働いています。大学中退したのは、これ以上、借金を増やせないって理由でした。成績はよかったのですが、傷は浅いほうがいいって辞めてしまいました。私はおカネを出せる状態じゃないし、もったいないとは思いますが、娘の選択です」

貧困の数だけ、子どもの夢は潰れていく。

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