現代日本とフランス第2共和政はソックリだ

憲法改正の先には何が待ち受けているのか

賢い大統領の言い分はこうだ。「自分には民衆という味方がいる。民衆はヨーロッパの革命家による革命の騒乱にあきあきしている。そのためには強力な政府が必要である。だから民主的な憲法を破棄しても、それを国民は認めるだろう」。そのように考えたルイ・ナポレオン(ナポレオン3世)はクーデターを起こした。まさにルイ・ナポレオンの見立ては的中した。一部の反抗はあったが国民の趨勢はクーデター支持であった。

美しき憲法は、かくしてその美しさのゆえに無残にも破棄されたのである。

政権維持のために外敵をつくることに奔走

そして第2共和政は薄命に終わり、長い第2帝政の時代が始まる。皇帝となったルイ・ナポレオンは、政権維持のためにつねに外敵をつくることに奔走した。国民の目を国内に向けさせないためにも、外敵の脅威というものが政権維持に欠かせないものであったからである。クリミア戦争、メキシコ戦争、イタリア独立戦争と続き、最後には普仏戦争によって、その牙城はもろくも崩れ、体制は崩壊する。

第2帝政をひらいたルイ・ナポレオン(写真:Universal Images Group/アフロ)

フランスのロベスピエール、ナポレオン・ボナパルト、ルイ・ナポレオンの出現は、独裁者はどこから出現するかという問題のヒントを与えてくれるかもしれない。これらの独裁者は、いずれも民主的世界から出現し、その出現が国の外の脅威から生まれている点に共通性をもつ。

ドイツの政治学者、カール・シュミットは『独裁』の中でこう述べている。「独裁とは、ローマ共和国の賢明なる発明であり、独裁官とは王たちの放逐の後に設けられた臨時のローマの政務官であって、危急時に強力な最高権力をもち、その権限は[通常の]執政官の職権のように、合議により、あるいは護民官の異議申し立て権および民会への提議権によって制限されることがない」(田中浩、原田武雄訳、未来社、16頁)。

これに従うと、独裁とは、ある意味民主国家が緊急時にそなえて置く制度ということになる。言い換えれば、独裁は民主主義が危機に陥ったとき、その民主体制の中から、民主主義それ自体を食い破り出てくる民主主義に必然的なものだということにもなる。国家存亡のおりだとか、戦争状態だとか、そうした危機に乗じて、民主体制はいつでも、自らの価値体系である民主主義を停止させることができるということである。

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