「格安スマホ」人気に陰りが見え始めた理由 ドコモ、au、ソフトバンクが相次いで反撃

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苦戦の背景にあるのは、MVNOへの顧客流出に危機感を抱いた大手3社が、対抗策を強化したことにある。3社はここ1~2年のうちに、「Y!mobile(ワイモバイル)」(ソフトバンク傘下)や「UQ mobile」(KDDI傘下)などのサブブランドを強化したり、「docomo with(ドコモウィズ)」や「auピタットプラン」といったMVNO対抗ともいえる通信料の割引プランを始めたりするなど、さまざまな手を尽くしている。そうした施策の成果が出始めているわけだ。

KDDIが傘下のUQ mobileを強化するなど、大手キャリアーも廉価なサブブランドの育成に取り組んでいる(筆者撮影)

実際、KDDIの田中孝司社長は11月1日の決算会見で、「昨年に比べると解約率は結構下がっている。アンダーコントロールな(auの顧客流出が抑えられている)状況になりつつある」と語った。

低価格プランで最も出遅れていたKDDIは、ここ最近MVNO対策に最も力を入れていた。それだけに田中社長の発言からは、大手からMVNOへの流出防止に一定のメドが立ったといえる。

MVNOには一層の差別化が求められる

もともと資金力やネットワーク、サービスの充実度で勝る大手3社が、従来の不満要因だった料金面などを改善してきた。これは当然ながらMVNOにとって脅威であり、一層の差別化戦略が求められそうだ。各社の動向を見るかぎり、カギとなるのはやはり、積極的なプロモーションやキャンペーンなどで顧客基盤の拡大を進めることのようだ。

業界で目立つのが、「楽天モバイル」ブランドでMVNOを展開する楽天である。同社はネット通販(EC)などで培った高いブランド力と豊富な資金力を武器に、実店舗の全国展開や芸能人を起用したテレビCMなどを積極的に実施し、今年8月に契約数は100万回線を突破した。

さらに11月には先述のとおりフリーテルを買収。これで140万回線を超えた。楽天モバイルで1000万契約を目指すとしており、買収なども含めた顧客基盤の拡大策を進めていくとみられる。

「mineo(マイネオ)」ブランドのMVNOサービスを提供する関西電力傘下のケイ・オプティコムは、早期の100万回線獲得を目指す。最近では安さを徹底的に訴える”王道”の手を繰り出した。9月1日から11月9日までに音声通話対応のプランを契約すると、12カ月間、月額410円からサービスを利用できる「大・大盤振る舞いキャンペーン」を実施。他のMVNOから顧客を奪うほどの好評ぶりだったようだ。

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