観光で苦戦する地方が陥る「幕の内弁当」の罠 外国人客にスルーされるのには理由がある

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もうひとつ、いま日本で最もインバウンドに力を入れ、注目すべき地域の1つに瀬戸内があります。2016年に7県(広島・岡山・愛媛・香川・徳島・山口・兵庫)の自治体や地銀等が集まって、せとうちDMO(正式名称はせとうち観光推進機構)という組織を設立。瀬戸内全体のインバウンドを強力に進めています。

せとうちDMOは筆者もお手伝いをしており、インバウンド用、海外向けに何本かのブランド動画を発信していますが、それがなかなか特徴的です。というのは、映像はこのエリアの有名観光地、たとえば原爆ドームや阿波踊り、道後温泉がこの動画には入っていないのです。

目立つ有名どころを並べて打ち出すのではなく、「瀬戸内海の多島美」をシンボルに、さまざまな風景を訴求し、自分たちのイメージを構築しようとしています。

動画に出てくるのは、「宮島」厳島神社の海の中にある鳥居、「直島」や「豊島」のアートや瀬戸内国際芸術祭、「しまなみ海道」のサイクリング、そこをめぐる橋や船……。これらは、いまや日本人よりもむしろ外国人旅行客に人気が出てきている旅行コンテンツです。

瀬戸内のエリアに点在する島にはさまざまな個性があります。そういった島々をめぐる楽しさがある観光地は日本には瀬戸内しかない、というのは確かに事実です。そうした着眼点から、「多島美」で外国人をひきつけることにこだわっているのです。

埼玉と瀬戸内の共通点は、「観光資源を絞って」いること

ここまで「埼玉の盆栽」と「瀬戸内の多島美」についてご紹介しました。エリアの規模や取り組み内容は違いますが、この2つには共通点があります。それはインバウンドでPRするべき自分たちの観光資源を思い切って絞り込んでいるところです。言い換えると、「どんな外国人旅行者に来てほしいか?」が明確にイメージできている、ということです。

埼玉は東京から近いので、言葉は悪いですが、「ミニ東京」のような中途半端な都市型デスティネーション(旅先)になる危険があります。しかし、2017年の埼玉は違いました。埼玉のインバウンドのターゲットは、実は世界にかなりの数がいることがわかった「盆栽/BONSAI好き」に振り切っています。

かつて関東大震災が起きたとき、多くの盆栽農家が大宮に移り住んだことが、埼玉が「盆栽の故郷」となった経緯だそうですが、知っている人は多くはないでしょう。しかし、そうした特徴を掘り起こして、観光地として整備を進めることを決断しました。「世界の盆栽の首都」という打ち出し方は、実に個性的です。

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