神鋼だけ?鉄鋼業界に求められる「一斉点検」 9年前に「業界ぐるみ」の改ざんが起きていた
神鋼の改ざん問題を受けて、鉄鋼業界の中では自主的に社内の総点検を行う動きも出ている。
建機や自動車向けに特殊鋼やばねを生産する三菱製鋼は昨年、社長の指示で監査室の聞き取りによる国内の法令順守状況を調査。今年10月以降は、顧客との契約順守状況も含めて社内監査を実施している。今のところ問題事例は発見されていないという。
一方、新日鉄住金やその子会社の日新製鋼は従来から鉄鋼連盟のガイドラインに則った品質管理体制を敷いており、今回特別に一斉点検する予定はないとしている。また、JFEスチールはガイドラインに則って対応しているが、神鋼の問題を受けて本社・品質保証部による年1回の定期的点検をやや前倒しで実施している最中という。
鉄鋼連盟の進藤孝生会長(新日鉄住金社長)は10月30日の会見で、神鋼の原因究明作業の結果を待って「ガイドライン強化を検討していく」方針を表明している。
経産省「総点検を要請する予定はない」
2008年に鉄鋼業界に総点検を要請した経産省は今回、鉄鋼業界やアルミ・銅などの非鉄業界に対して総点検を要請しないのか。東洋経済の取材に対して同省製造産業局金属課の小見山康二課長は、「検討しているかどうかは別として、今のところ要請を行う予定はない」と答える。
その理由については、神鋼が11月10日に発表した原因分析の社内調査報告書を見る限り、品質責任を各事業部へ丸投げするような経営管理体制や閉鎖的な組織風土など「神鋼特有の問題という色彩が強いため」と言う。鉄鋼大手の関係者は「今回の神鋼の改ざんは、その多くが鉄連のガイドラインの対象外であるアルミ・銅部門で起きている」と指摘する。
確かに神鋼固有の問題があることは間違いない。しかし、今回の神鋼の報告書には、「収益評価に偏った経営」や「生産性や納期を優先する風土」など、2008年の改ざん事案で指摘されたものと似た構造的要因が含まれている。アルミ・銅部門だけでなく、鉄鋼部門を含めて組織横断的に発生していることも事実だ。企業の法令順守問題に詳しい郷原信郎弁護士は、「神鋼の問題には同社だけに限らない構造的背景がある。この際、潜在化した同様の問題を一斉に調査して表に出すべきだ」と指摘する。
ガイドライン制定から10年近く経った今、その実効性を確認する意味においても、経産省の要請いかんにかかわらず、各社が自らの組織に同種の問題が潜在していないか改めて総点検することが重要ではないだろうか。
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