「そっくりスイーツ」超老舗が生んだ仰天技

社内会議で半数が商品化反対も、大ヒットに

そんな老舗ゆえ、そっくりスイーツの開発当初は会社のイメージに合わないことを理由に反対する声も大きかった。

シリーズ最初の商品となるシュークリームは2003年6月に発売。きっかけは商品企画会議中のひらめきだった。同社の創業祭がある6月に出す新作が決まらず、期限が目の前に迫る中、夜食に買ってきたたこ焼きを会議室で食べながら雑談をしているときに、アイデアが浮かんだ。ひらめきから製品化までは1週間程度。そこには、長年培ってきた職人の技がふんだんに盛り込まれた。

しかし、程なくして開かれた店長会議では、半数が会社のイメージに合わないことを理由に反対した。暗礁に乗り上げかけたそっくりスイーツだったが、現社長で16代目当主の高田信吾氏の意見は違った。高田社長は大学卒業後、アパレル関連の企業に就職していたが、体調のすぐれない父を支えるため20代後半で虎屋本舗に入社。1994年、31歳のときに16代当主に就任していた。

そんな高田社長は「単にこの商品を見て大笑いした」ことを理由に、商品化にゴーサインを出した。根拠はそれだけだったという。売れるか売れないかは問題ではなく、お客さんが驚いて喜んでくれるだろう、という1点が決め手となったようだ。こうした中小企業ならではのトップダウンによるスピード感覚がさらに商品開発に拍車をかけた。

外国人を意識した「意外な」新商品も

シュークリームはヒットを収め、その後ミルフィーユやモンブランなどシリーズ化につながった。一方で、そっくりスイーツは1000円前後の価格帯の商品が多く自家消費需要がメインだったため、贈答品としても使える季節感のある商品の開発にも着手する。

てまりずしにしか見えないが、実際はわらび餅(写真:虎屋本舗提供)

こうして生まれたのが、和菓子のお弁当シリーズ(春夏秋冬)だ。中でも「てまり寿司」(てまりずしの見た目をした京風わらび餅)は、「お土産グランプリ2016」のフード・ドリンク部門で174商品の中からグランプリを受賞している。

このコンテストは、国内のみならず海外の人にも喜ばれるお土産であるかが審査基準となっているが、日本食の定番として認知度の高いすしと、日本の伝統である和菓子を融合させた点が高く評価されたようだ。

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