J1鹿島の地元「神栖」がハコモノ行政に大揺れ 19日の市長選は「神栖の乱」の幕切れになるか

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今年5月に市に提案した住民投票は議会で可決され、10月の住民投票につながった。「(建設見直しの)賛成が多数に上る自信はなかった」と伯耆氏は振り返る。

だが、住民投票の結果は思わぬ方向に動く。投票から5日後の10月6日、現職の保立(ほたて)一男市長は記者会見で「計画どおりアリーナ建設は継続」すると明言したのだ。

そもそも住民投票は、賛否を問う政策や手続きについて定めた条例を議会が可決することで実施される。今回、神栖市で行われた住民投票について定めた条例には、投票結果について市長および市議会は「尊重しなければならない」としか記載されていない。そのため、投票結果に沿わない判断を下しても違法性はない。

そのため、市側はアリーナ建設はすでに着工しており、今から見直せば設計変更や工事の現状復帰、さらに発注済み資材のキャンセル料など、総額38億円もの費用がかかるという試算を根拠に計画の見直しを拒んでいる。

また、争点の1つになっている音楽ホールやプールも、神栖市の施設管理課は「建設予定のホールは300席ほどで、市内には同規模のものはない。プールももともとは市民の要望を受けて計画に盛り込んだもので、災害時は生活用水としても活用できる」とする。

他方で、「仮に見直すとしても、住民投票によって建設途中の公共施設を見直した例は過去に無く、どのような手続きが必要か分からない」(同)と困惑しているのも実情だ。

いずれにせよ、住民投票の結果に沿わない市の姿勢に、見直し派からは「市民の声を尊重していない」(伯耆氏)という批判の声が上がっている。

悲鳴を上げる建設会社

アリーナの完成予想図。市内に鉄道駅が1つもない神栖市にとって、市の顔としての役割も期待されているが、完成に暗雲が漂っている(写真:神栖市)

さらに、ここに来て混乱に拍車がかかっている。神栖市では11月12日告示、19日投開票のスケジュールで、任期満了に伴う市長選を予定していた。

現職の保立市長は今年6月時点で高齢を理由に不出馬を表明し、後継者指名もしないとしていた。アリーナ建設に計画当初から携わっていた市長だったが、住民投票で見直しの票が多数に上っても、引退表明は撤回しなかった。

そのため、アリーナの運命は新市長の手に委ねられることとなった。市長選に立候補している新人3人は推進派、見直し派、立場不表明と完全に立場が分かれているもようで、選挙後のアリーナの行く末は予測不能だ。

こうした計画縮小を求める市民と、推進派の行政との板挟みとなり、悲鳴を上げているのは現場の建設会社だ。

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