ベゾス氏側近が語る「アマゾンAI」発想の原点 AIスピーカー「エコー」に5000人超が携わる

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――アマゾンのコアビジネスは小売業だ。エコーの発売後、アマゾンにおけるユーザーの買い物動向は変わった?

ショッピング機能の利用規模はまだ限定的。ただ、たとえばキッチンのシンクでハンドソープがなくなったと気づいたときに声だけですぐ注文できるなど、便利に使ってもらえる場面は必ずある。(エコーやアレクサは)ユーザーの生活を便利にする長い道のりを進み始めたばかりに過ぎず、今後も機能開発を続けていく。

求められれば、製品群を広げる

――米国ではさまざまなタイプのエコーを発売している。ディスプレーがあるものなど、製品ラインナップを広げている理由は。

Dave Limp(デイブ・リンプ)/アマゾン米国本社のデバイス&サービス担当上級副社長。2010年の入社以来、キンドル、ファイアTV、ダッシュボタン、エコー、アレクサなど、自社デバイスと関連するサービスの開発、販売に携わり、現在は一連の事業を統括(撮影:尾形文繁)

開発を進める中で、特定の利用状況においてはディスプレーがあったほうが快適になるとわかった。たとえば、通信・コミュニケーションがそうだ。遠く離れたところに住む家族とすぐにビデオ電話でつながれるのは、すごく便利だ。

われわれはこういったケースがわかるとすぐに、ディスプレー付きの製品を作ろうと決めた。すべては具体的かつ必要なケースがあるかどうか。何か(新しい機能)を付けるには、説得力のある理由が必要だ。これはすべてのコンピューティングに通ずる考え方でもある。

――アマゾンはエコーに限らず、さまざまなデバイスを自社で開発している。ECの会社であるアマゾンが、自社でデバイスを手掛ける意義は何か。

ECはアマゾンの一側面に過ぎない。アマゾンにおけるデバイス開発は、ただガジェットやデバイスを作っているのではなく、全体の文脈、つまりデバイスと(それに付随する)サービスの両方を合わせて考える。ガジェットを作ることを核とする会社は、ユーザーへのアップデートのために毎年新製品を出す必要があるが、アマゾンはそうではない。

われわれが作っているのは、クラウドを通じて改良し続けられる製品だ。その先駆けがキンドルであり、とてもいい例だろう。「Fire TV(ファイアTV)」もそうだ。コンテンツやアプリケーションをどんどん増やすことで、より便利なサービスへと刷新していく。これがアマゾンのやり方だ。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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