バブルおじさんの跋扈こそが日本の大問題だ 思考停止が「飯、風呂、寝る」だけの人生を招く

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浜屋:長時間労働は、学ぶ意欲と思考力という、これからの日本にとっていちばん大事なものを削いでしまっているんですね。

中原:それとともにやる気も削がれてしまっている気がします。

出口:今、中原さんがいちばん力を入れていらっしゃる研究について教えてください。

中原:今やっているのは、それこそ「長時間労働是正と人材開発」に関する研究です。パーソル総合研究所さんと中原研究室で「希望の残業学」と呼ぶ共同研究プロジェクトをやっています。この研究の目的は3つです。

まず、PCシャットダウンなどの強制的な長時間労働是正策の「効果」を明らかにすることです。こうした強制策を実施するためには、どのようなことに配慮しなければならないかを考えます。2つ目は、長時間労働を生み出す「職場の風土」や「上司のマネジメント」は何が課題なのかを掘り下げていきます。3つ目は、「長時間労働を解消した、その先にある未来 すなわち希望」を描き出すことです。

個人で言えば、働きがいや健康がどのように向上するのか。組織的に見たら、どのように生産性が上がるのか、そうした「その先の希望」を明らかにすることを目的にしています。これを6000人の調査で明らかにしていきます。

全く「チェンジ」しない長時間労働大国日本

出口:それは、楽しみですね。本になったらぜひ読みたいです。長時間労働については、わたしはいつも次のように説明します。日本の正社員の平均労働時間は年間2000時間弱です。パート・アルバイトを入れると1700時間くらいになりますが、とりあえず正社員だけということにして、2000時間働き、夏休みは約1週間です。

それで、この3年間の成長率は1%もありません。一方、ヨーロッパの平均労働時間は年間1500時間を下回ります。 ということは、500時間も少ないということになります。夏休みは約1カ月なのに、成長率は2%弱なのです。どちらがいいですか?という話ですよね。昔はなぜ年間2000時間でも頑張れたのかといえば、年平均7%成長していたからです。7%成長ということは、72の法則(72÷年利(複利)%=2倍になるために必要な年数)で10年で所得が倍増するということを意味します。

浜屋:ちょっと想像つかないくらいすごい時代ですね。自分たちの金銭的な豊かさに対して抱く展望が、現在とは全く異なる。

出口:今の中国がそうです。10年前にGDPが500兆円だったのが、今は1000兆円ですから。10年で倍になったから、年間2000時間の長時間労働で、夏休みがなくても我慢できたんですよ。

浜屋:確かに目に見えて生活が豊かになっていくような時代なら、我慢もできたのかもしれないですよね。

中原:メディアの報道を見ていると、長時間労働が大きな問題となっています。企業もさまざまな取り組みをして、働き方改革がけっこう進んでいるように見えるのですが、今回、6000人規模の調査をやっていてわかったことは、実態は高度成長期の時代から全く変わっていない部分もあるということでした。

詳細は2018年2月に明らかにしていきます。報道ばかり見ていると、あたかも働き方改革が進み、みな残業をしていないように見える。ですが、思ったよりも社会が変わるのは時間がかかるということです。

出口:働き方改革は全く進んでいない、と。そういえば、先日、驚くべき話を聞きました。男性が100%育休を取っているという某保険会社で働いている社員に聞いたら、「最低1日は休め」と上司から命じられ、みんな1日休んで、男性の育休取得率100%と言っているというのです。

浜屋:たった1日ですか……。赤ちゃんとママのお迎えに行ったらそれでおしまいですよね。

出口:とんでもない話だと思いました。「男性は育休を100%取っています」というPRのためだけにやっているなんて……。でも「働き方改革やっています」と喧伝している企業の中には、こういう類の話が山ほどあります。

浜屋:今こそ、働き方改革を本気でやらないと立ちゆかない、これはもう経営課題ですよ、とさんざん言われているのに、経営者の方々に、まだ火がつかないというのはどうしてなのでしょう。

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