続々登場「乗り物運賃無料」企画は成功するか 10月の池上線に次ぎ11月は2カ所で開催

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行政の補助を受けず民間で運営している無料バスの例としては、ほかにも自由が丘(目黒区)を走るコミュニティバス「サンクスネイチャーバス」がある。こちらは企業ではなく特定非営利活動法人(NPO法人)の「サンクスネイチャーバスを走らす会」が運営。地元有志によって1997年に運行を始め、今年で20年を迎えた。天ぷら油のリサイクル燃料を使用しているのも特徴だ。

東急線自由が丘駅を中心とする2つの循環ルートと、付近にキャンパスのある産業能率大学への路線があり、合わせて月1万人弱の利用があるという。運行費用は地域の企業や大学、商店などの「サポーター」による会費で賄っており、「多くはないが個人サポーターもいる」(同会事務局)という。

イベントとしては高い効果?

日頃公共交通を利用していない地域住民の「乗るきっかけ」づくりや認知度アップのためのイベント、地域の回遊性を高める無料巡回バスなど、さまざまな狙いがある「運賃無料」。公共交通の利用者減少や、中心市街地の空洞化に悩む地方都市などで参考になる部分もありそうだ。

だが、協賛金によって常時無料で運行する形は、企業や人などが集まる都市部ゆえに成立している面も大きい。日の丸自動車興業の担当者は「モデルとして(地方から)声をいただくこともあるが、協賛企業が数多く集まる場所でないと難しいだろうと思う」。自由が丘の「サンクスネイチャーバス」も視察は多く、地方自治体関係者などもヒアリングに訪れたことがあるというものの、「条件が(自由が丘とは)なかなか同じにならないということで、同様の仕組みを導入したという話は聞かない」(同会事務局)という。

一方、イベントとしての「運賃無料」は、丸1日分の運賃収入はなくなるものの、「定期券利用者が多い事業者などであれば、ものすごく厳しいというほどではないのでは」(ある交通事業者関係者)との声もある。

10月の東急池上線に続き、11月も複数の鉄道・バス会社がイベントとして実施することで、引き続き注目を集めそうな「運賃無料」。公共交通の利用促進に向けた「インパクトあるイベント」として、あるいは地域活性化の1つの手段として、今後も追随する例は現れるだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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