BMW「X3」、乗ってわかった最新進化の実力 3代目に刷新したSUVは何がスゴいのか

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もちろん電子制御頼みではなく、歴代X3が得意としている各操作に対する素直な反応も健在だ。路面環境や走行状況がハンドルの重さや振動の変化からつかみ取りやすい。それらクルマとドライバーとの距離感の近さに加えて、今まで同様という観点では、前後重量バランス50:50も改めて触れるべきだろう。これがあるから路面の凸凹を通過した際などのクルマの揺れが少ないし、素早く収束するので快適で操作性もよい。

無駄な揺れを防ぐ4輪駆動システム「xDrive」

そしてクルマの無駄な揺れを防ぐ観点で改めて強調したいのが、BMW独自の4輪駆動システム「xDrive」。旋回を直接コントロールできるフロントタイヤは “なるべく”旋回に集中してもらうべく、リアタイヤを主体に駆動させて機敏性や操作性も高める4輪駆動システムを採用している。そこが魅力と認識していたが、スタートや加速での後ろに傾く姿勢変化を抑える効果があることを確認できた。

イメージでは、リア駆動やフロント駆動車両よりも、そして、ほかの4輪駆動車両よりも、クルマを押し出しリアが沈んで加速するリア駆動力とクルマを引っ張りフロントが伸びながら加速するフロント駆動力を的確に調整して、クルマが傾きを抑制。平行移動するように走り出す感覚を得たのだ。

もちろん電子制御の足回りも相まって姿勢変化を抑えているのは当然だろうが、何にせよ先代X3にはなかった快適な走り出しと加速がxDriveの魅力として追加されたと直感した。

ほかにも8速ATの変速ショックがとても少ない特性が、前後方向の無駄な揺れを抑制することなど、すべての作りが姿勢変化を抑制することを目的にしているかのようで、それがSAVであることを忘れさす快適性やひと回り小さいクルマのように走れる扱い易さ、さらには重心の高さを感じさせない安定感をオールラウンダーのX3は実現している。

Mパフォーマンスモデルの「X3 M40i」(写真はBMWのサイトより)

最後に触れていないエンジンに関してだが、日本導入の直列4気筒エンジンは試乗車に用意されていなかったので未知数。代わりにMパフォーマンスモデルの「X3 M40i」があったのだが、これが極上だった。加速力や吹け上がりが良いのは当然として、述べて来た振動抑制された上質な乗り味も、このモデルだから備わっていたとも考えられる。

だからこそ言おう。Mパフォーマンスモデル、日本に積極的に入れて欲しい。そのスポーツ性とコンフォート性を高次元で両立した商品力は日本の道との相性も良く、一時的に利益率の高いMモデルの販売を“食べて”しまうかもしれない。しかし長期で見たら、BMWファンが増えるだろうし、逆にMモデルもよりキャラクターが明確になっていくとも予想できる。何はともあれ、国内仕様の直列4気筒モデルに早く触れて実力を確認してみたい。

五味 康隆 モータージャーナリスト

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ごみ やすたか / Yasutaka Gomi

自転車のトライアル競技で世界選手権に出場し、4輪レースへ転向。全日本F3選手権に4年間参戦した後、モータージャーナリストとしての執筆活動を開始。高い運転技術に裏付けされた評論と、表現のわかりやすさには定評がある。「持続可能な楽しく安全な交通社会への貢献」をモットーとし、積極的に各種安全運転スクールにおける講師を務めるなど、執筆活動を超えた分野にもかかわる。また、環境分野への取り組みにも力を入れており、自身で電気自動車やハイブリッド車も所有。https://www.facebook.com/yasutakagomi53

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