できる人は健全に「他者のせい」にしている 「自責思考」には実は限界がある

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<他責思考>問題を他者のせいにする

他責思考とは、仕事や職場で起きた問題を、それが自分のミスであったとしても他者のせいにする思考です。

他責思考の人のミスや問題が起きたときの考え方
→サポートを怠った上司や先輩が悪い
→マニュアルがわかりにくいから時間がかかった
→新人だからできなくて当然
→話を理解しなかった相手が悪い

こう見ると、デキる社員は自責的、ダメ社員は他責的と言われるのもうなずけますね。かくいう私も、新人や若手を対象とした研修やリーダーシップなどの研修では「自責思考で問題解決をしていきましょう」とお伝えしてきました。

しかし、いわゆる仕事ができて、困難な状況でも気持ちが折れることなく成果を出しているコンサルタントの方々を見ているうちに、他責思考も必要なのではと思うようになってきました。

駆け出しのコンサルタントの頃の私は、自責思考の塊だったのですが、次第に疲弊し「どうせ自分なんて……」というところまで精神的に追い込まれてしまったことがありました。そんなときにトラブルプロジェクトの立て直しや難易度の高いプロジェクトなど非常に大きい問題を解決しようとしている人たちを見ていると、いい意味で他責思考を取り入れているのではないかと思うようになったのです。

仕組みの改善につながる考え方

たとえば研修の中で活用するテキストやマニュアルなどが理解しにくかったりすると、自責思考だと「自分の理解力が足らないからだ」となるところを、「これはテキストがわかりにくいよ。思考の順に沿ってないからだよ」とテキストの問題にしたり、チームにミスが多い場合、自責思考の人が多いと「うちのチーム、モチベーションが低いからミスが多いんだよね。気合い入れなくちゃ」となりがちなところを、「これだけミスが出るってことはそもそもやり方がおかしいんじゃない?」と仕組みのせいにしたりするわけです。

これらは一見、他責思考でよくないことのように思えるかもしれませんが、テキストや仕組みの改善につながる考え方でもあります。特に非常に大きい問題があるような場合には、すべてを自分のせいだととらえる自責思考で考えてもすぐに解決できないことも多いため、自分自身の心身の健康を損ねることにつながりかねません。

今のビジネス環境はブラック企業という言葉がよく聞かれるように非常に過酷ですし、これまで日本企業全体が抱え込んできた働き方の問題も個人の自責思考だけでは解けないものでしょう。

そういったときに、他責思考を良い方向に使うことで改善の糸口が見えてくるのではないでしょうか。

次ページ他責思考をする際の注意点
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