「自分探し」を支援する、デンマークの仕組み 時に立ち止まり、学び直す選択肢が必要だ

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特徴的なのは、卒業してもMBAなどの資格を得られるわけではないこと。自分が何者かを知り、どうしたら社会に貢献できるかを学んだ生徒たちは、卒業生同士の強固なネットワークと「好奇心を持ってカオスに臨んでいく」力を武器に、世界をナビゲートするリーダーとして巣立っていくという。

カオスパイロットの生徒と未来教育会議のメンバーでのワークショップ風景(写真:未来教育会議)

人は一生学び、成長することができる

人生100年といわれる時代、私たちはどのように学び、どのように生きるべきだろう。デンマークで見てきた学びの現場からは、一度決めたルートを全うすることだけが是ではなく、変化し続ける時代の中で必要があれば立ち止まり、新しいことを学び、進む方向を切り替えていけばいいという、柔軟で包容力のある社会的意思が感じられた。

また、多様性の中で自己発見し、自分の中に眠る可能性を開花させることで、混沌とした世界を恐れずポジティブに立ち向かう力に結び付けていくプロセスも目の当たりにした。

考えてみれば、これは自然な生き方ではないだろうか。人は一生学ぶことができるし、成長することができる。それを前提に考えれば、おのずと「自分はどう生きたいか」という問いに直面するのではないか。もちろん、そのためには、個人の意識だけでなく、安心して立ち止まることのできる社会制度の整備や、こうした生き方を受容する社会文化の醸成などの基盤づくりが不可欠だ。

今回見てきたデンマークでは、フレキシキュリティ(フレキシビリティとセキュリティの造語)という、労働市場の流動性×セーフティネット×積極的な再教育の仕組みの3つを掛け合わせる、社会の仕組みが存在する。個人への投資が社会への還元につながる、という個人と社会全体の幸せを創り出す仕組みとなっている。未来の学び方と未来の働き方は不可分であり、セットで考えていくことが重要ということがわかる。

ここまで5回にわたり、「未来の学び方・働き方はどう変わる?」をテーマに、変化の大きいVUCA時代を生き抜くヒントを探ってきた。ここから見えてきた最大のポイントは、何よりも「自分自身を知ることが大切」ということ。ある意味「自己責任」の時代となる中、社会や産業構造の変化に応じた働き方が必要になっていく。自分にはどんな可能性があるのか。自分がいちばん大切にしていることは何か。今一度、問い直してみるのもよいのではないだろうか。

原 節子 博報堂ブランドデザイン副代表

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はら せつこ / Setsuko Hara

1970年生まれ。慶應義塾大学卒業。三和銀行、三和総合研究所を経て、2000年博報堂入社。運輸、金融、流通、飲料、トイレタリー等のブランドコンサルティング業務に従事。 グループ・企業ブランド戦略、CI・VI開発、ブランド体系戦略、インナーブランディング、組織変革等に主に携わる。昨今は、社会への価値創出をマルチステークホルダーで取り組むソーシャルイノベーションプロジェクトとして、未来教育会議、SDGs OPEN 2030 PROJECTなどを推進。

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未来教育会議
みらいきょういくかいぎ / Mirai Kyouiku Kaigi

未来の社会、未来の人、未来の教育のあり方を多様なマルチステークホルダーで共に考え、共に豊かな現実を創造していくために立ち上がったプロジェクト。2014年発足。先進的な取り組みと課題の視察を行う「スタディツアー」、2030年の社会を洞察する「未来シナリオ」の制作と普及、多業種多企業が協働して経営改革や新規事業開発に向けたアイデアを創出する「21世紀未来企業プロジェクト」などを実施している。
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