再生機構解散から1年半、支援先企業の「再生」は道半ば
“降格”部長の東奔西走 再生機構の「再生」とは
再生機構から経営を引き継いだ投資ファンドのロングリーチグループは、海底ケーブルメーカーのオーシーシー全株をNECと住友電工に譲渡した。三井鉱山はコークス市況活況を受け、業績を上方修正。新日鉄と住友商事が筆頭株主になった。
「機構の支援で債務が減り、前向きの経営ができるようになった」
そう話すのは、栃木県・鬼怒川温泉にある名門旅館「あさやホテル」の営業部長、八木澤哲男氏だ。実は八木澤氏、もとはあさやホテルの社長を務めていた。業績不振で産業再生機構の支援を受けるに至り、部長に“降格”されたのだ。
八木澤氏はまだ49歳。降格以前は地元の旅館業組合や観光協会の幹部を務めていたが、現在は4人いる部長の1人として奔走している。「今期中に繰越赤字は解消できる見込み」(木村和夫同社社長)と、会社の業績は順調のようだが、鬼怒川温泉全体の観光客数はピーク時の半分近くに減少している。大株主の大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツは「エグジット先としては、恒久的投資家に持ってもらいたい」といい、八木澤氏らによるMBOにするのか、出口の模索も続く。
再生機構の発足当時、わが国で再生ビジネスは一般的ではなかった。官主導とはいえ、そうしたビジネスをわが国に根付かせる先導役を果たした実績は評価すべきだろう。07年に解散した機構の収支決算は国庫納付額が432億円、通算納税額は312億円と国家財政にも貢献した。
しかし、時限組織の再生機構は再生の途上で実務を民間スポンサーに委ねて退場し、地方の現場からは「やり逃げ」との声も上がる。渋るメインバンク相手に債務調整を行い、支援先企業の財務リストラは進んだが、企業を成長軌道に乗せることについては成功したのだろうか。
たとえば、ベネッセコーポレーション傘下で再建中のパソコン教室運営のアビバ。再生機構は1円でベネッセに譲渡したが、市場縮小に伴いアビバの過去3期の売上高は年々減少。営業赤字も3期連続で、ベネッセは08年3月期に27億円の減損損失を計上するに至っている。
再生機構で同社再生を手掛けた現投資会社幹部は「“再生”とは、市場からニューマネーを調達できない企業が再び財務上の力を取り戻すこと」と語る。アビバはベネッセの信用力で調達に不自由はしないだろうが、これを再生と呼べるのだろうか。再生機構の第1号案件から5年。その意義が改めて問われている。
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