再生機構解散から1年半、支援先企業の「再生」は道半ば

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再生機構解散から1年半、支援先企業の「再生」は道半ば

会社の値段は2円--。今年4月、中国企業へのある企業の売却がちょっとした話題になった。

「Kappa」ブランドで知られるスキーウエアなどスポーツアパレルのフェニックス。その株式と同社向け債権を、100%大株主であるオリックスがわずか2円で売却したのだ(債権、株式を1円ずつ)。売却先は中国、マカオでKappaブランドを展開する中国動向有限公司。香港市場の上場会社でもある。

フェニックスの2008年2月期の業績は29億円の最終赤字だった。バランスシートは約32億円の債務超過。業績を見るかぎり、ただ同然で売却されたも当然といえる。

オリックスが同社に出資したのは、04年12月。企業価値向上策として、無理な売り方をやめ、内部固めを先行させることに力を注いだ。しかし売上高は年々縮小し、コスト削減も追いつかなかった。「主力のウインター物の市場が縮小する中、Kappaブランドやゴルフなども思うように売り上げが伸びなかった。グローバル展開するナイキやアディダスのように、もっと広告宣伝などに投資すべきだったかもしれない」。関係者はこう振り返る。

同社が注目される理由は実はもう一つある。それは03年4月に設立された産業再生機構の支援先企業の一つだったという点だ。

1953年設立のフェニックスは、スキーブームの追い風に乗ってぐんぐん成長し、90年代半ばのピーク時には年商300億円に達した。ところが、スキーバブルがはじけてスキーウエア市場は出荷額で200億円規模にまで縮小。長野県・志賀高原にあるホテル事業進出に伴う借り入れ負担も加わり、04年8月に再生機構の支援を仰ぐに至る。その後オリックスがスポンサーになったが、08年3月期までの業績は「黒字になったり、赤字だったり」(前出関係者)。機構の支援から4年経過したが、再生したとは言いがたい。

中国動向への売却前の4月には約300人いる社員の3分の1を対象に希望退職を募った。機構支援前のフェニックスの借入金は120億円、従業員435人、支援決定から機構の支援終了までの日数は477日。再生機構の支援先企業のプロフィールとしては、ごく標準的な企業だった。その会社の再生を、機構から引き継いだスポンサー企業が断念し、中国の新興企業の傘下で再スタートを切るという。再生機構の支援先企業に、いったい今、何が起きているのだろうか。

“倒産株価”の企業も 燃料高騰で先行き不安

03年5月の業務開始から07年3月の解散まで、4年近くにわたって活動した産業再生機構。その支援対象となったのは計41社だ。受けた「金融支援」の金額は、大はダイエーの5970億円から小はリゾートホテルの4億円まで。業種もメーカーから運輸、流通とさまざまだった。

ところが、昨年7月には島根県にある瓦製造販売会社のアメックス協販が、負債総額39億円(グループ合計)を抱えて自己破産を申請。大手企業でも、不動産不況のあおりを受け、10円台の“倒産株価”で取引されているダイア建設のようなケースもある(下表)。

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