ネット証券がビットコインに殺到するワケ

FXのレバレッジ規制強化で顧客の多くが転出

金融庁はこうした金融システムリスクへの対応策の検討を開始した。「現在、業者から意見を聞いているところだが、FX取引のレバレッジ上限を現状の25倍から10倍程度に引き下げること、さらにFX業者の自己資本増強なども検討している」と金融庁関係者は言う。ネット証券側は「実施は2018年秋にはありうる」(GMOフィナンシャルホールディングス)と身構える。

仮にレバレッジ上限が10倍に引き下げられるとどうなるか。FX取引高減少幅の予測は難しいが、松井証券のある幹部は「3割程度の顧客に影響が出るだろう」と話す。レバレッジ上限の引き下げで、FX投資家にとってハイリスク・ハイリターンの魅力が薄れる。そのため、同じく差し入れ証拠金で数十倍のレバレッジ取引ができ、価格変動の大きさや最近の相場高騰でも注目されるビットコインなど仮想通貨にFX投資家がシフトするというわけだ。

見逃せないのは、ネット証券にとってFX事業への収益依存度が高いことだ。前2016年度決算を見ると、FX取引量世界一のGMOクリック証券(GMOフィナンシャルホールディングス)は純営業収益に占めるFX事業の比率が実に約75%、楽天証券が約19%、SBI証券(SBIホールディングス)が約18%という状況だ(松井証券調べ、松井、マネックス、カブドットコム証券は1桁%)。

FXの延長線上にあるビットコインも規制される

日本のFX取引高は世界で最大規模。サラリーマンや主婦など一般の個人が幅広くFX取引を行うのは日本特有の現象と言われる。2006年のライブドアショック後、株式市場の沈滞を受け、ハイリスク・ハイリターンを求める投資家によってFX市場は急成長した。投機性の高さが問題となり、2010年にはレバレッジを最大25倍にする規制が導入され、中小のFX業者淘汰が進んだ時期もある。

世界でも特異のFX市場を創り上げたネット証券各社。彼らがそのFXの延長線上に仮想通貨交換市場を立ち上げるなら、FX投資家の大量移動とともに大衆的な仮想通貨の投機市場が誕生するかもしれない。仮想通貨で盛り上がった中国が急速に規制を強化する中、日本がガラパゴス的な発展の本丸となる可能性がある。

現在、ビットコインなどの取引のレバレッジは最大25倍(GMOコインの場合)。将来的に取引高が膨大となれば、金融システムリスクへの対応からレバレッジ規制が導入される可能性は高い。新たな投機市場の誕生をめぐり、金融庁と投資家のいたちごっこは続きそうだ。

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