爆走アベマTVは「稼げるメディア」に化けるか 番組制作に2年連続で200億円を投じる理由

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先行投資が続くアベマTVだが、今期は広告枠の販売を本格化する。折しも広告業界では、ウェブサイトやSNS上の動画広告の市場が急拡大している。特に、普段テレビを見ない若年層に人気のあるネットサービスは総じて、動画広告の出稿先として存在感を高めている。

アベマTVならではの優位性もある。ユーチューブをはじめとする選択・再生型の動画サービスでは、動画広告を一定時間視聴した後にスキップできる仕様になっているのが一般的だ。一方でリニア型(地上波放送と同じように決まった時間に決まった番組を放送する形式)のアベマTVにはスキップという概念がない。それゆえ広告の視聴完了率は80%と、他サービスに比べ高く、広告主に受けているという。

広告制作を本格化、アベマは稼げるか

広告メニューも目下拡充中だ。地上波のCMを流用する形式に加え、すでにあるCM動画をスマホ視聴に合ったスタイルに加工する形式、タイアップ番組をゼロから制作する形式などを幅広く提案していく。

アベマTV事業を率いるサイバーエージェントの小池政秀常務は、広告強化に意気込む(撮影:今井康一)

中でも、タイアップ番組制作ではネットならではの取り組みをしたい考えだ。「アベマTVだけで25チャンネルあるうえ、スマホ上にはツイッターやフェイスブックなど別のサービスもあふれている。つまらないと少しでも思われれば、一瞬で離脱されてしまう」(小池常務)。従来型のインフォマーシャル(商品紹介番組)ではなく、バラエティ番組調に仕上げるなど、視聴者層に合わせて作り込むという。

広告関連の売上高について、小池常務は「まだ読めない」としつつも、「社内的には目標を定めて、チームを組んで取り組んでいる」と話す。藤田社長自身が有力広告主企業に出向く“トップ営業”も、今期から本格的に始めた。ユーザーを着実に増やしてきたアベマTVだが、実際に”稼げるメディア”になれるかどうかが今後の焦点となる。

とはいえ、「(アベマTVの赤字が200億円を超えない範囲で)収益が上がった分は制作投資に回す」(藤田社長)のが当面の方針。放送局としての新たな可能性の模索を続ける。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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