エアレース室屋義秀選手が描く「福島の未来」

アジア人初の総合優勝、快挙の軌跡を追った

室屋義秀(むろや よしひで)/エアロバティックス/レッドブル・エアレース・パイロット。1973年生まれ。福島の復興支援活動や子どもプロジェクトにも積極的に参画。福島県「ふくしまスポーツアンバサダー」。全国でエアショー活動を展開(撮影:佐久間秀実)

「福島の地で受けた恩を返すという思いがあるだけ」と室屋は使命感を持って話す。

「2011年は個人としても大会で結果が出せず、ぼろぼろでヘコみきっていました。一緒に盛り上げていきたい思いはあります。福島と一緒に歩んできた波に乗せてもらっているところがあるのかもしれません」(室屋)。

福島でレッドブル・エアレースを開催したいという考えもある。世界中に福島の映像が配信されると同時に10万人の集客が実現できる。福島に宿泊して食事をして人と触れ合ってもらえたら、福島の現状を知ってもらえるのではないか、と室屋は語る。自分ができることをしたいと福島への恩返しを考えているようだ。

【11月4日3時30分追記】記事初出時、この箇所に「ふくしまスカイパークにはドローンの研究施設もできている」との誤った記述があったため該当部分を削除しました。

「ビジョン2025」室屋選手の思い

会社の設立から17年。室屋は、何もないところから始めて現在は日本中で年間27カ所、週末にエアショーを開催する仕組みを作ってきた。2025年までの将来構想を示した「ビジョン2025」がいまは大きな目標としてある。

航空業界を大きくしていきたいという思いから、幅広い人に航空の世界を知ってもらうべくエアショーを各地で展開しているのだ。今後、10年かけて子どもたちが大きくなったときに、航空スポーツを含め航空産業に就職先を作り、職業として就いてもらうところの入り口を担いたいという。

「長いスパンで物事を見ていくとしたら、最低でも3年必要。テレビゲームみたいにすぐクリアできるわけがない。ちょっと時間はかかると思うけど、自分の能力と目標設定を正しく見ること。本気で進んでみること。大概はコミットしないで途中で妥協したほうが楽だから、妥協してしまうのではないでしょうか。

本気で進んでいれば、能力が足りない、目標設定がおかしい、本当にやりたいことではなかったということがわかってきますよ」(室屋)。自分自身、長いスパンをかけて目標を追い続けた結果、パイロットの頂点に上りつめた今がある。

――大空を自由に飛びたい。

このたった1つの強い思いこそが、時間や年齢という現実的な壁を超えて、自身やチームの夢を体現してみせたのだ。取材時、よく世界を制覇した選手に成功の秘訣を訪ねてみると、「思いのチカラ、自分は勝てると思うこと」と口をそろえて言う。今までのスポーツの歴史を見ると、1人の世界王者の出現が、後に続く大きな道となっている。今回、室屋義秀の快挙を見た子どもたちは、きっと自分たちもできると強い思いが刻み込まれるだろう。

(文中敬称略)

室屋選手のフライトの模様(Red Bull Air Race提供)
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