──2012年に金正恩政権が本格化して以降、経済状況が改善しているという見方があります。
この数年のミクロ的な視点からいえば、毎年状況はよくなっている。マクロ的に見ても、経済規模は拡大している。もちろん制裁強化が進めばマイナス成長になる可能性はある。ただ、それが3〜5年という期間で済めば、それ以降、北朝鮮経済は今後もよくなるだろう。10年ぐらい続いても、北朝鮮は「欲しがりません、勝つまでは」と持ちこたえることもできる。
北朝鮮の指導層やエリート層は、ミサイルの到達距離が米本土に近づけば米国は自分たちを大事にすると思っている。北朝鮮という国家が存在することを前提に米国が交渉してくれればいいが、逆に米国が締めつけようとすれば北朝鮮にとって命取りになるかもしれない。
──豊富な訪朝経験を基に、北朝鮮国民の本音も記されています。1990年代後半、「苦難の行軍」と呼ばれた経済難を生き抜いたエリートの1人の言葉は印象的です。
あの時代、「心がピュアな人たちはたくさん亡くなった」と10年ほど前に聞いたときは、これからの北朝鮮経済は、これまでと違った形で変わってくるのだろうなと感じた。社会主義の理想を掲げ、国家の力を信じていた人たちほど食糧が手に入らず死んでいったということだ。生き残るためには仕方がなかったとしても、生き残った人は当時亡くなった人たちと比べると「不純」な気持ちを持ったり、後ろめたい行動をしたといった思いがあるのだろう。
「苦難の行軍」時期である1995〜1996年ごろ、深刻な物不足に陥った。国家の配給も止まった。家長が家族を養えなくなり、妻や両親、子どもまで一家総出で買い出しをしなければ生きていけない時代を経験している。
この記事は有料会員限定です
残り 1527文字
