日本人が知らない「北朝鮮経済」の表と裏 実は富裕層も増え始めている

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──「トンジュ」という新興富裕層が増え、経済を動かしている側面もあります。

前述したグレーゾーンぎりぎりで動いている人たちこそ、カネを稼ぐことができる。一方で、それができないまじめで融通の利かない人もいる。それはどこでも一緒だろう。うまく立ち回れれば豊かになれる。一方で北朝鮮社会は相互扶助が利いている社会でもある。一定の功績を認められた人や傷痍軍人、学校の先生など、個人的に商売や小遣い稼ぎができない人には、余裕がある人がカネやモノを支援するなどの美風が根強い。

政治から見ると極めて恐ろしい独裁国家に見えるが、その中であっても人々は人間としての生活を営んでいる。

将来的に日本と北朝鮮経済の距離は近い

──1970年代や1990年代初頭に盛んになった日朝貿易についても詳細に紹介しています。当時、北朝鮮側では「なぜ苦労して日本と付き合わなければならないのか」という不満があったとあります。

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1970年代の日朝貿易は、貿易代金を北朝鮮が支払えず、信用取引ができなくなってダメになった。その後、外貨稼ぎで日本企業と取引していたとき、「品質や納期にうるさく、守らないとカネも支払ってくれない」との不満が北朝鮮側に広がった。それは、旧ソ連などの社会主義国は、1年ぐらい納期が遅れても目をつぶってくれるような関係だったからだ。

当時、日本や在日コリアンの商工業に携わっていた人たちが現地で委託加工などのビジネスを教え込んだ。経済制裁で先行きが不透明だが、委託加工はアパレルなど中国との取引で重要な外貨稼ぎ源となっている。

かつて北朝鮮と取引があった日本企業には、北朝鮮労働者の質を評価するところが多い。日本の工場とほぼ同じ品質ができてくるという。これは、中国の工場ではまったくできなかったようだ。日本企業との取引と比べると「中国企業とは楽勝。納期も品質もルーズ」だと言う。将来的に日本と北朝鮮経済の距離は近いといえる。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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