「後発だった」ナイキがトップになった理由

ABCマート社長「革新し続ける頑固者は最強」

――創業者のフィル・ナイト氏に会ったことはありますか。

6年くらい前、ナイキ本社内の社員用レストランでちらっとお見掛けしたくらいで、私にとっては伝説の人物です。企業家としてというよりも、「NIKE」というブランドを創り上げたクリエーターとして、圧倒的なブランドイメージを世界に印象付けたわけですから。

当時、彼はもう会長職に就いていたのですが、その社員食堂には頻繁に行っているようで、いつも決まった席、しかも大勢の社員がいる普通の席の一つに座るという話を聞きました。情熱を冷ますことなどできない方なのでしょう。

彼は引退後もずっとナイキに大きな影響を与えているのでしょうが、ナイキとのビジネス経験や、本書『シュードック』を通して感じるかぎり、独裁者タイプではない。人に任せるところは任せきる。正社員第1号のジェフ・ジョンソンとのかかわりの中でもそれがよく表れていますよね。ナイキ独自のカルチャーを浸透させていくことで、人を育んでいったのだということがよくわかりました。

ランナーがシューズを、挑戦者がビジネスをつくった

――本書『シュードッグ』を読んで、新しい発見はあったでしょうか。

まず感じたのは、ナイキという企業、ブランドの根底にあるのが、「ランナーがランニングシューズをつくり、挑戦者がビジネスをつくった」という非常にシンプルな話だということ。あらためて、「ビジネスは複雑にしすぎてはいけない、目的をシンプルにして進むのがいちばんだ」と認識させられましたね。

本の中でフィル・ナイトは状況を正面から受け止めて、決して歪んだ解釈をしない。たとえば投資の仕方ひとつでも、持っているおカネをすべて投じる。つねに背水の陣を自分で敷いていくというタイプだと感じました。これはこれで疲れる生き方だな、と感じることもありましたが(笑)。

この本では、彼の心象もよく描かれています。特に家族に対する葛藤と、ビジネスに対する葛藤を感じました。その葛藤を表すように、緊張するとストレスから手首にはめたラバーバンドをパチパチと引っ張っては離す癖がついたというシーンが人間的な一面をよく表していて、印象的でした。一方で、彼は妥協しない。これでいいのだと立ち止まらないパワフルさがある。ナイーブで屈強なビジネスマンだと思いましたね。

それから、フィル・ナイトのグローバリズム。ナイキがオニツカや日商岩井など日本とゆかりが深いことは、この業界では有名な話で、この本を読む前から私も知っていました。しかし、この本を読むと、彼は学生時代、日本をはじめいろいろな国をめぐり、その国の精神や哲学を吸収していたことがわかりました。それこそが真のグローバリズムなのでしょう。外国の会社と交渉することがビジネスのグローバリズムではない。フィル・ナイトは本当の意味でのグローバルビジネスマンだと感じました。

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