シェルはスキャンダルをどう乗り越えたのか アイコン化した強い組織の研究<4>

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シェルの最初の液化天然ガス用浮遊式プラント。最大の航空母艦の6倍の重量がある

仕事を速く進めることが求められ、従業員はより厳しい短期的な結果で評価されるようになってきた。給与のボーナス要素が増え、主に財政目標が評価基準とされた。

リーダーシップのポジションで、人が頻繁に入れ替わるようになった。「1990年代の終わりには、リーダーシップ・レベルのポジションの平均年数が短くなりすぎました」。ファン・デルフェールは言う。「計画した者は結果の責任を取ることがなくなり、『会社ファースト』から『自分ファースト』のメンタリティ、態度へと変わっていきました」。振り返ってみると、何か問題が起こらないほうがおかしいくらいだ。

原油埋蔵量スキャンダルへと発展

『アイコン的組織論ー超一流のコンサルタントたちが説く「能力の好循環」』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

そして、大変なことが起こった。「もう嘘をつくのに、疲れてうんざりです。埋蔵量に関しても、大幅に強気/楽天的な数字に対して必要な下方修正についても」。これは2003年11月9日に、元採掘のディレクター、ウォルター・ヴァン・デ・フェイバートが当時の会長、サー・フィリップス・ワッツに宛てたメールの書き出しだ。

このメッセージがメディアに流出し、シェルの原油埋蔵量スキャンダルへと発展したのだ。結局原油の埋蔵量は約20パーセント、下方修正された。米証券取引委員会(SEC)に対して多額の罰金を支払うことになり、株価も大幅に下落した。会社が目指していたのが、株主の利益を追求することだったのは、皮肉なことだ。

シェルは会社の建て直しを図り、もとの能力循環に戻った。「リーダーシップの任期も、もとの平均4年から8年に戻りました」。ファン・デルフェールは言う。「十分な長さです。さらに長くなると、自己満足に陥るリスクが出てきます。短すぎると、何かを達成するには時間が足らず、重要な貢献をしているのかどうかの判断もできません」。エンジニアは再び仕事に誇りが持てるようになった。(2006年に)初の海上ガス生産プラットフォームで、風と太陽エネルギーに取り組み、(2009年に)サハリンⅡ ―LNG工場を、気温の低い環境で実現した。

2011年の年次報告書の序章では、CEOは最初のパラグラフで、シェルが変化をもたらしたプロジェクトについて触れている。パールGTL、カタールガス4、アサバスカ・オイル・サンド・プロジェクトだ。さらに「成長は我々の戦略の鍵だが、優れた運営、将来の可能性の開拓も同じく重要だ」と書いている。そして2012年に、シェルは「フォーチュン500」で上場企業の世界第1位に輝いた。

ザビエ・ベカルト、フィリス・ヨンク、ヤン・ラース、フェボ・ウィベンス 『アイコン的組織論』著者

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『アイコン的組織論』(フィルムアート社)著者。ザビエ・べカルトは設立して間もない戦略コンサルティング会社ベントハーストの共同創立者。フィリス・ヨンクはビジネス革新に情熱を持つ戦略コンサルタント。ヤン・ラースは、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の奏者兼事務局長。フェボ・ウィベンスはペンシルベニア大学ウォートン校にて戦略についての博士研究を行っている。

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