佐賀県+宝島社。異色コラボの狙いとは? 出版社が「編集力」で稼ぐ方法
30代女子の持つパワー
そもそも、県庁のような堅い組織が、東京の普通の企業とコラボするのは異例のことだ。なぜ佐賀県は、あえて宝島社とタッグを組むことを選んだのか。佐賀県の古川知事に聞いた。
――宝島社をパートナーに選んだのはなぜですか?
きっかけは桜田さんとの出会いです。桜田さんの話を聞けば聞くほど、マーケティングの考え方から、雑誌の並べ方、ブランドアイテムの付録の付け方まで、群を抜いていると思いました。桜田さんの個人の魅力と、女性雑誌ナンバーワンである宝島社の組織力を借りれば、何かを実現できるのではないかと。宝島者は、みんなが予測していることと、ちょっと違うことをやる会社だと思っています。
――イカを選ぶセンスは、なかなかユニークです。
そこにいくのかという感じですよね(笑)。「透明すぎるイカ」でしょう。やっぱり宝島社だと思いました。自治体側から見て、「自分たちが売りたい」ものと、「これは売れるんじゃないか」というものがずれている、いちばんいい例だったと思います。
――自治体の多くは、何が売れるかを見抜く、マーケティング力が弱い。
佐賀県には、諸富の家具や海苔や有田焼など、プロの目から見たらすばらしいものが数多くあります。ただ、マスの消費者に対して、アピールすることに対して、遠慮がちだったところがあります。有田焼にしても、消費地の問屋さんとの関係を大切にする一方、産地に来てもらい、そこで実際に手に取り買っていただくことに、あまり熱心に取り込んできませんでした。
佐賀は真面目な人が多いので、見た目や名前をかっこよくして売ることに対して抵抗感があります。「よい物を作っておけば、あとは知らん」というところがあるのですが、それは違うだろうと。
――なぜ首都圏の30代女子をターゲットに?
ひとつは、30代の女性が情報に敏感な世代だからです。自分たちで情報を選び取り、それをシェアして、伝播する力と、経済力が両方備わっています。
もうひとつは、シニア層であれば、焼き物など佐賀県の個別のアイテムを知っていますが、30代は佐賀についてあまり知りません。ですので、30代の人に訴えかけて、佐賀県について情報発信してもらえば、これまでの弱点が弱点でなくなると考えました。
新しいマネタイズ方法
宝島社にはすでに、佐賀県以外の自治体からも、マーケティング支援に関する依頼が飛び込んでいるという。マーケティング支援は、米国の地方紙などでも徐々に拡大しているビジネスモデルだ。地元の中小企業などでは、デジタルを中心とするマーケティングに関するコンサルの需要が強い。
雑誌のセールスが苦戦する中で、「編集力を売る」「マーケティングのコンサルを行う」という事業は、ひとつのマネタイズ法として、存在感を増していくのではないだろうか。
(撮影:今井康一)
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