プロ野球「ユニフォーム付きチケット」の真価 自チーム以外のファンも球場に呼ぶ仕掛け

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このため、想像の域を出ない論にはなるが、もともと中日とヤクルトは、球団マスコットのドアラとつば九郎が、シーズンオフに名古屋と東京で共同ディナーショーを開くほどの間柄。カープ戦ではネット裏から3塁側が真っ赤に染まる神宮球場も、中日戦の3塁側はガラガラ。ナゴヤドームでのヤクルト戦も同様の状況なので、互いに利害が一致したということなのかもしれない。

惜しむらくはチケットの販路。ナゴヤドーム開催のゲームはヤクルトファン向けでありながら中日のチケットサイトで、神宮開催のゲームは中日ファン向けでありながらヤクルトのサイトで販売した。

このため、ファンクラブ優先受け付け中に完売してしまい、一般発売には回らず、一般発売開始前にチケット売買のネットサービス「チケットキャンプ」に出品される事態になった。

少々驚いたのは、9月27日東京ドーム開催の巨人―中日戦で、中日ファン向けに昇竜ユニフォーム付きチケットが売り出されたこと。扱ったのはeプラスのみで、eプラスもまた「主催者からの委託で販売している」ことを理由に取材拒否。こちらもどういういきさつで実現したのか、話を聞くことはできなかった。ただ、主催は読売新聞社と日本テレビなので、常識的に考えればeプラスはこの両社からの委託でこのチケットを販売したことが推測できる。

セ・パ球団間で「ビジターユニ付きチケット」を期待

東京ドームの巨人戦は、筆者からすると徹底した「ジャイアンツファースト」という印象がある。それを考えると、よくぞ実現したものだと思う。この勢いで、来シーズンはセ球団間だけでなく、そして交流戦の期間中はセ・パの球団間でもビジターユニフォーム付きチケットが拡大することを期待したいところだ。

ただ、唯一、無料ユニフォーム配布自体を実施していない広島の場合、そもそも双方向になりえない。そのうえ、マツダスタジアムのビジター応援席のチケットは、カープファンが購入してコンコースで立ち見をすることが常態化しており、ニーズ自体に疑問が残る。ハードルは高そうだが、あの東京ドームの巨人戦で実現したのだから、風穴は開いたと考えていい。できるところから実施してもらいたいと思う。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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