鉄道は「EV・自動運転」時代に生き残れるか コスト低下と自由度の高さに地方では大敗?
EV(電気自動車)の場合、いま開発途上なので確定的な数字は出ていないものの、家庭で充電する場合、約3円/kmとみられている。つまり、距離単価が半減するのだ。技術革新と普及による量産効果で、この距離単価はさらに安くなることも予想される。
ちなみに、一般社団法人次世代自動車振興センターのサイトによると、1kmの走行に対するランニングコストは、ガソリン車が約7.3円に対してEVは約2.6円と、3分の1程度になると記されている。部品点数が少なく単純化されることから、車両価格も下がると予想されている。自動車の保有と利用に対するコストが大幅に低下するのだ。
鉄道の強みは大量輸送だが…
鉄道の運賃は、JR本州3社の幹線では300km以内だと16.20円/km、301~600kmだと12.85円/kmとなっている。もっと安い山手線や大阪環状線でも13.25円/kmだが、これに「初乗り運賃」が加算されることから、最低運賃(3km以内)は山手線140円、大阪環状線120円となる。
これらの数値は、JR本州3社という経営状態が優れた鉄道会社のものだが、経営が厳しい地方鉄道ではさらに上昇する。自動車の所有者は距離単価だけで比較しがちなので、EVによってランニングコストが低下すれば、特に地方では相対的に鉄道の割高感が増すことになる。
いま、地方鉄道の主な利用者は高校生と通院する高齢者となっている。いわゆる交通弱者の移動手段となっているわけだが、通院需要はともかく、高校生については通学時間がほぼ決まっているため、大量輸送手段が必要とされる。バスでも輸送力が足りないケースがあることは、2001年に福井県の京福電気鉄道福井支社・越前本線が事故により運行を取りやめた際、冬季に激しい渋滞が発生したことで証明された。
このケースでは、福井県主導でえちぜん鉄道という新たな第三セクター鉄道を立ち上げ、電車の運行を再開することで解決している。鉄道が大量輸送ならびに波動輸送に向いた交通手段であることが、このケースで改めて認識された。
ところが、少子高齢化が進む近未来には、今より走る車が少なくなる可能性が高い。つまり、道路渋滞が緩和の方向に向かうと予想される。さらに、少子化の進展による学校の合併・集約が進めば、通学需要は小中学生にも及んでくる可能性が高いとみていいだろう。通院についても、現状より広域から患者が集まるようになる可能性が高いと考えられる。
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