鉄道は「EV・自動運転」時代に生き残れるか コスト低下と自由度の高さに地方では大敗?

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では、地方における鉄道が生き残る道はないだろうか。筆者は大きく2つの可能性を予想している。

1つは、観光に特化した鉄道、もう1つは地図から鉄道駅が消えることを避けるために、地域で運営費を負担することに住民が同意した鉄道だ。

山陰本線の廃線跡を活用してトロッコ列車を走らせている嵯峨野観光鉄道(筆者撮影)

観光に特化した鉄道は、日本でもすでに実例がある。その1つは京都府の嵯峨野観光鉄道だ。山陰本線の廃線跡を活用し、保津川の渓谷を楽しむためのトロッコ列車を走らせて成功している。京都市内から近い地の利を生かした観光鉄道だ。

富山県から長野県にかけての山岳地帯を、ケーブルカー、高原バス、ロープウェー、トロリーバスと各種の乗り物で貫く「立山黒部アルペンルート」も、観光に特化した公共交通機関の例だ。自然保護のために一般車の乗り入れを全面禁止とし、観光客はこれら鉄道を含む公共交通を乗り継いでいく方式は、スイスで先進事例が多く見られるものだ。

いち早く蒸気機関車の動態保存をはじめた静岡県の大井川鐵道も、いまや観光鉄道といってよい状況となっている。同社は収支を非公表としたが、2015年の大井川本線は定期券売上額が約2675万円と、本線の全売上高である約7億2492万円のわずか3.7%でしかない。定期列車に乗っても、地元の利用者を見かけることは極めて少ないのが実情だ。

ますます存続は厳しくなる

また、観光鉄道の新たな方向として、道路で近づけないところに駅を設ける事例も出てきた。山口県の錦川鉄道では、錦川に沿った南桑―根笠間に来年9月、新駅を設けるという。いまは、観光のために徐行して透き通った川の水を眺められるようにしているが、現地で下車ができるように駅を設置するというのだ。JR北海道・室蘭本線の小幌駅や、JR東海・飯田線の小和田駅、田本駅など「秘境駅」と呼ばれる駅が人気を集めているが、そのような話題性のある駅を造ってしまおうというわけだ。

このように、地の利を生かして観光客を独自に誘致できる仕組みを作った鉄道は、将来も生き残る可能性が高い。だが、EVや自動運転車の普及による交通体系の変化が進めば、そうでない横並び意識の強い地方鉄道は、現在以上に存続が厳しくなっていくのではないだろうか。

それぞれが置かれた状況を吟味して、特色のある鉄道運営がなされるよう、地方鉄道各社の健闘を期待したい。

伊藤 博康 鉄道フォーラム代表

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いとう ひろやす / Hiroyasu Ito

1958年愛知県生まれ。大学卒業後に10年間のサラリーマン生活を経て、パソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを立ち上げて代表取締役に就任。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退したため、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。鉄道写真の撮影や執筆なども行う。

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