中国の若者が東京を描くドラマにハマる本質 どんなにがんばっても超えられない壁の存在
実は、日本より60年も早く男女共働きを実現した中国でも女性たちは、この「女性の価値は何?」ということに同じく悩んでいる。中国女性は、親にコントロールされ、大学時代には恋愛すらも禁止されていることも多い。
ところが、就職した途端25歳までに結婚しないと家族の恥だと責められ、慌ててお見合い結婚。好きな仕事にチャレンジしてみたかったが、「子ども(今では2人)を産まないと、お嫁の価値がない」「子どもができたら、自分の好きな仕事を考えるなんて、とんでもない親だ」と言われるため、自分の気持ちを殺し、黙って社会が求める「いい女(母)」になる。結婚や出産を選ばない女性は、家族の理解がないかぎり実家に帰るのに強いストレスを感じるのだ。
そして、毎日のように親戚から「いくら仕事頑張っても、結婚して子どもを産まないと、女性として不完全だ」「カネ儲けできる女は必要ない」「早くお見合いをしなさい」と言われてしまう。バリバリ働いて経済的に独立していて、自分がやりたいことがあったとしても、社会を敵に回す勇気がない中国の女性は多い。
「東京女子図鑑」で描かれた、「バリバリ働き、自分のキャリアを積み、そして40代になっても美しい」という中国人女性にとっての憧れを体現する主人公が若さで価値の判断をされ、理想が現実に負け、傷だらけの体験していることに強く共感したのだ。
中国人女性の価値観は東京女子に近づいていく
中国人女性は子どもがありながら、正社員として働き、一見、仕事と育児を両立しているように見えるが、実はそうでもない。周りの人が全面的に支えているか、そうでなければ仕事での出世を断念するのだ。
専業主婦やDINKS(Double Income No Kidsの略。共働きで子どもがいない夫婦)、フルタイムで働くワーキングマザーという選択肢も出てきている。社会環境が変わり、女性がこれからどのように生きていくのかは今後の大きな課題だ。就職・結婚・出産の過程で今まで判断された年齢や家族のメンツではなく、自分の意思で選択した幸せな生活を送ることは、女性が求めている本当の価値といえるだろう。
地方出身の女性が1人で上京し、夢の生活を掴むため、現実と戦いながら奮闘する。田舎にいた頃の自分の憧れを実現したのに本当の幸せとは何かに迷う。そして年齢とともに女性としての価値が減るという社会の見方に対して疑問を覚える。このリアリティが中国人女性の大きな共感を得た。
ビジネスでもマーケティングでも、中国の若者や中国人女性を対象とする際、このドラマが描写した女性の価値に対する社会課題が中国にも存在していることを前提にする必要があるだろう。
これまで、日本と中国の違いや日本人と中国人の違いといった視点から数多くの議論があった。だが、根底となる社会の価値観や女性の意識は、2つの国の間で距離が近づいているように筆者は感じている。
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