中国の若者が東京を描くドラマにハマる本質 どんなにがんばっても超えられない壁の存在

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この中で中国人が本質的な部分で中国と似ていると感じるのは、東京の「階層」という存在である。主人公の綾は付き合った港区出身の男性から、将来結婚するなら「港区の女性」としかない。地方出身の女性とは無理だといった内容のことを言われる。この言葉が浮き彫りにする「港区」を北京・上海・広州などの大都市に置き換えると、中国の「階層」の真相も見えてくる。

中国における戸籍制度は、中国人を「都市人」と「農民」に厳格に区別した。すべての中国人の戸籍は都市戸籍と農村戸籍に分けられている。雇用や教育、医療、社会インフラなどの面で、都市戸籍を持っている大都市在住者が優遇されている。そのため、農村や地方都市出身者は、さらに上のランクの生活を送るため、一所懸命に大都市に残るようになる。

しかし、大都市で就職先を見つけても、都市戸籍がないので住宅の購入に制限があるし、学校に多額の「支援金」を出さないと子どもは大都市で教育を受けられない。また、コネと努力を尽くして大都市の戸籍をもらっても、生まれも育ちも地方なので、「外地人」と見られ続け、男女とも結婚相手としての順位は低い。

日本には中国のような厳格な戸籍の区別はないが、「東京女子図鑑」で港区の男性が心配していたように、人との付き合いや考え方は地域によってまったく違う。そのため結婚したら、後々大変なことになる。そうなるより、港区なら港区と同じ環境の下で育てられた相手のほうが安心だろう。

中国の場合は国土が非常に広く、地域で言葉・飲食・習慣が異なるので、「よそ者」への不安が余計に高い。つまり、中国ではいくら優秀でも自分の生い立ちによって大都市では、よそ者と刻みつけられる。いつまで居ても、都市には自分の居場所がないと思うわけだ。

これは、主人公の綾がいくら港区の男性と付き合ってもハッピーエンドにはなれず、東京で高級住宅に住んでも、周りに住む本当のセレブからは相手にされないことと本質的には似ていることなのだ。

女性の価値とはいったい何なのか?

東京女子図鑑が中国の若者、特に女性を魅了したもう1つのポイントは、「女性の価値は何?」という点だ。

主人公の綾は、懸命に仕事をして年収も高く、見た目もますます美しくなっている。そんな綾が結婚相談所やお見合い会場に行くと、いちばん人気がない。男性が結婚相手を探すとき、妊娠・出産能力(=年齢)を優先するといわれ、見た目や年収などは二の次になる。

その後、結婚した綾は理想を支えると言った夫(真人)とも別居生活になる。結局、真人は不倫相手との間に子どもができて離婚してしまう。男性が求める女性は、結局何もない女性であって、夢も理想も持たず、男性の夢を支える女性だ、と綾は慨嘆する。

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