総選挙の今こそ「働き方改革」法案を読み直す 時代遅れの「日本型雇用」と決別できるか

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なんといっても目玉になるのは、労働基準法改正です。まずは、単月100時間の残業を絶対上限などとする労働時間上限規制を挙げないわけにはいかないでしょう。以前「残業規制はむしろ迷惑」と考える人々の事情で述べましたが、社員の健康管理の問題を踏まえて労働時間の絶対上限を設けるということと、会社施設・資料を使ってスキルアップしたいと考える若者のキャリアプランを両立させるための議論が重要です。

労基法改正の中には数年前から改正が予定されていたものもいくつかあります。中小企業においては、月60時間超の割増賃金が5割増しになります。これは、賃金原資に限りのある中小企業にとっては、インパクトの強い話です。

また、有給休暇5日の時季指定義務も盛り込まれています。これは、有給休暇の中から5日、社員が有休を使う時季を会社が定めよとするものです。違反した場合には罰則がありますので、企業としては有休取得時季を指定せざるをえません。これは日本の有給取得率が低いことから設けられた規定ですが、実務的には年末年始やお盆の休みにくっつける形で取得させるケースが多いと想定されますので、取りたい時期に有給が取れないという反発もあるところでしょう。

成果を評価する仕組みをどのように構築するか

また、「柔軟な働き方」を実現するために弾力的な労働時間制度の拡充を目指す改正もあります。フレックスタイム制の精算期間が3カ月まで延長可能になること、企画業務型裁量労働に提案型営業などを追加すること、専門・企画業務型裁量労働制のいずれも、始業・終業時刻の決定に関する裁量が含まれることを明記したうえで健康福祉確保措置を追加し、指針により少なくとも3年の経験が必要とする、といった点です。

裁量労働制は、時間に縛られない働き方をしている場合に時間比例ではない賃金支払いを促進する制度であるため有用ですが、一部の企業がこれを悪用して「残業代を払わなくてもいい制度」だとして安易に拡大適用している点に問題があります。

この問題の本質は、高度プロフェッショナル制度とも共通しますが、時間比例で報酬を支払う働き方はあくまで工場労働者向けであるということです。ホワイトカラーについては時間をかければかけるほど生産性改善に寄与するとは限らず、成果を評価する仕組みをどのように構築するかは大きな課題です。

労基法は工場法という明治時代の法律からずっと、「1時間残業するごとに割増賃金を支払うべき」という規制になっていますので、これでは企業慣行も変わりにくいでしょう。安易な濫用を防ぐことは大前提ですが、時間に縛られず生産性の高い働き方を評価する仕組みを、人事制度・法律の両面から後押しすることが求められています。

さらに、改正が予定されている法律の中に、雇用対策法というものがありますが、これはほとんどの人に知られていません。それは当然で、国の雇用政策に関する基本方針を定めた法律であるため、関心を持ちようがないからです。しかし、今回の働き方改革法案において、雇用対策法は働き方改革の理念を反映した基本法として位置づけられており、誰も知らないところで静かに重要な改正がなされようとしています。

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