30年続く「マタニティコンサート」の感動秘話 胎内で音楽を聴いた赤ちゃんもお母さんに
このコンサートは、妊婦に限らず、妊婦の家族を中心に誰でも参加できるようにするとともに、少子化、育児放棄、児童虐待など多くの問題がある現代において、改めて「親子の絆」「家族の絆」「地域の絆」の大切さを訴えることをテーマにするという。
「マタニティコンサートという題名だと、妊婦以外の方は参加できないという誤解を与えてしまいます。まだ妊娠していないけど、これから子どもを持ちたいという方なども、本当は大歓迎なのです。それから、昔は、マタニティコンサートの参加者は、ほとんどが女性で、男性の方は肩身が狭そうでしたが、最近は、奥様と連れ添って来てくださる男性の方も、大勢いらっしゃいます。
そんなこともあり、“命の絆”を考えてくださる方なら、どなたでも気軽に参加できるよう、間口を広げる意味で、新たにタイトルを変えてコンサートを開始することにしました。おじいちゃん、おばあちゃん。お父さん、お母さん。そして子どもたちという3世代にわたる家族ぐるみの参加を中心に、さまざまな方に足を運んでいただければうれしい」と話す。ちなみに、10年で全47都道府県での演奏を終えるのを目標にしているという。
音楽は国境を超えて
最近の吉川久子という演奏家を語るうえで、もう1つキーワードになるのが、東欧のセルビア共和国という国だ。セルビアは旧ユーゴスラビア連邦に属した国で、日本では、あまり知られていないが、大変な親日国だという。というのは、コソボ紛争で、NATOによる空爆などでダメージを受けたセルビアに対して、いち早く経済協力をしたのが日本だったのだ。日本の外務省のホームページによれば、セルビアの人たちからいちばん感謝の念が示されたのは、“(セルビアの首都である)ベオグラード市交通公社にバス93台を供与したこと”であり、今でも、日本とセルビア両国の国旗が車体に描かれたバスが、ベオグラード市内を走っているという。
そのセルビアが、平均月収4万円という経済的に貧しい国であるにもかかわらず、日本で東日本大震災が起きたときには、民間の力で1億9千万円を集めて寄付してくれたという。吉川さんは、偶然、セルビア大使館と知り合う機会があって、その話を知った。そして、その頃、セルビアが大洪水に見舞われていることを知り、今度は日本からのささやかな恩返しをということで、チャリティコンサートの収益の一部を、大使館を通じて送ったのが、セルビアと吉川さんの交流の始まりだ。
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