「トランプ大統領豹変」に2大政党が大慌て

これぞトランプ流取引術なのか

ところが9月に入り、状況は一変する。先駆けとなったのが、財政協議の決着だ。トランプ大統領は、議会が約1カ月の夏季休会を終えた翌日の9月6日に、いきなり議会民主党指導部と財政協議でディールを結んだ。

合意されたのは、来年12月までの暫定予算と債務上限の適用停止である。予算と債務上限は9月末までに立法化しなければならない課題であり、いずれも協議の難航が予想されていた。ところがトランプ大統領は、ギリギリまで粘る様子もみせず、民主党の要求を丸飲みする形で、あっさりと取引に応じた。ハリケーン・ハービーの復興予算が急がれていたとはいえ、あまりにあっけない幕切れだった。

慌てふためく共和党

慌てたのは共和党だ。「小さな政府」を信奉する共和党には、債務上限の引き上げに懐疑的な議員が多い。議会共和党の指導部は、政治的に困難な投票の機会をできるだけ少なくするために、少なくとも来年11月の中間選挙より先まで債務上限を適用停止にしたかった。

トランプ大統領の民主党との取引は、これで終わらなかった。驚愕の財政協議から、わずか1週間後に実現したのが、前述のDACAと国境警備強化の取引である。

強硬な不法移民対策は、トランプ大統領の選挙公約の主軸だった。そのトランプ大統領が、選挙中には廃止を提唱していたDACAについて、国境警備の強化さえ実現できれば、持論であるメキシコ国境への壁の建設問題と切り離しても延長に応じる方針を示したというから大変だ。不法移民に厳しい共和党議員の間に、「とてもついていけない」という雰囲気が広がったのも無理はない。

重要課題である税制改革も、気になる動きがある。これまで、税制改革の素案作りは、もっぱらトランプ政権と共和党の間で進められており、民主党は話し合いから排除されてきた。ところがここにきてトランプ政権は、民主党議員からも賛同を募るような気配をみせている。トランプ大統領が、富裕層減税を圧縮して、中低所得者向け減税に照準を合わせ直すような発言を繰り返しているのも、民主党を意識してのことだろう。

それだけでなく、トランプ政権は、かねてから議会共和党が熱望していた相続税の撤廃についても、富裕層優遇との民主党の批判を受けてか、必ずしも撤廃にこだわらない意向を示し始めている。27日に発表される予定の税制改革骨子では、共和党の支持が強い富裕層減税を堅持する見込みだが、審議の進み具合によっては、富裕層減税を見直し、民主党に手を伸ばす可能性は消えていない。

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