ロヒンギャ問題、スーチー氏批判は筋違いだ 国際的な批判は状況を悪化させかねない
彼女としては、自分が先走ってこの見解を軍や国民に語っても説得は難しいと考え、アナン委員長に象徴される「国際社会の眼」もいれた第三者委員会に調査してもらい、同内容の見解を示してもらうことによって、現状の打破を狙ったものと考えられる。無論、この内容を軍や世論が受け入れるには相当な時間と工夫が必要であるが、世論を軟化させる材料とはなりえる可能性がある。
残念ながら、この前向きの答申が出された翌日未明、襲撃事件は発生した。これにより軍との協調の下、事件をテロリストによるものと断言せざるを得なくなった彼女は、アナン委員長のせっかくの提言が吹き飛んでしまうリスクを背負うことになった。しかし、彼女にとってこの提言は現段階でも大きな希望の灯であることに間違はない。
国際社会がとるべき2つの道
以上から、国際社会がとるべき道は2つに絞られる。ひとつは40万人近くにのぼる難民の保護に一致してあたることである。そこにバングラデシュ政府はもちろんのこと、ミャンマー政府も責任もって絡ませる必要がある。
ミャンマー政府は軍部を中心にこの事件をテロリズムによる主権侵害としてのみとらえる傾向があるが、それはそれとして、難民のこれ以上の流出防止と、流出難民への物質的・精神的保護にきちんと関わらせるべきだ。また、できるだけ早い段階で、帰還に向けた交渉に加わるよう促す必要がある。
もうひとつは、中長期的にアナン諮問委員会の提言を生かす方向でミャンマー政府がロヒンギャへの国籍付与に向けた政策をとることができるよう、国際社会としてスーチー国家顧問をバックアップすることである。国際社会が冷静さを取り戻し、この問題の本質的かつ現実的な解決に向けて何が必要なのかを考えれば、同顧問に対する非難のオンパレードをやめるべきことは明白だといえよう。
最後に在日ロヒンギャ人の声を紹介しておく。9月初旬の都心でデモをしたロヒンギャの一男性がテレビカメラに向かってしゃべったひとことである。
「私たちはいまでもアウンサンスーチー国家顧問を信頼しています」
ロヒンギャから信頼されているスーチー国家顧問を、国家顧問から辞任させるようなことがあってはならない。
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