奇抜な新商品、ホット炭酸は定着するか 日本コカ・コーラとキリンが投入、サントリーは様子見か

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炭酸飲料市場は2005年頃から拡大基調。昨年はキリンのトクホコーラ「メッツコーラ」やサントリーの「オランジーナ」など炭酸飲料の新商品が次々と投入され、話題を呼ぶとともに需要を広げたが、季節変動が大きいままだと、さらなる底上げにも限度がある。そこで、2社はホット炭酸を開発・投入することで、1年のうちで最も炭酸飲料が売れない冬場の落ち込みを抑え、1年を通した売れ行きを均そうとしているのである。

キリンはコンビニエンスストア限定、日本コカ・コーラはコンビニ、スーパー、自動販売機というルートを中心に販売していく方針だ。コンビニ大手の関係者は「冬場はホットドリンクの棚を大幅に拡大する。ホット炭酸でも(既存のホットドリンクと)温め方は同じなので、目新しい新商品が出るのは歓迎」と話しており、流通側からもホット炭酸への期待がかかる。サントリー食品インターナショナルなど、ほかの飲料大手では、具体的なホット炭酸の投入計画は示されていないが、先行2社の売れ行きなどを見ながら、続く動きも出てくるかもしれない。

ただ、ホット炭酸には弱点も少なくない。まず、加温器のある店舗や自動販売機以外では、販売が難しい。家庭で別の容器に移して再加熱すると炭酸が抜けてしまうため、基本的には店舗や自動販売機で買って、すぐに開栓して飲む以外の消費はあまり考えにくく、飲用シーンが限られてしまう。

スタートダッシュがカギ握る

ホット炭酸にとっての最大の課題は、スタートダッシュに成功できるか。それも着実なリピーターをどれだけつくれるかにありそうだ。最初は物珍しさも手伝い、想定かそれ以上に売れるだろう。ただ、開発に携わったコカ・コーラ東京研究開発センターの朝日浩・製品開発炭酸グループマネジャーも言うように、「一度は買ってくれても、味が良くなければ続けて飲んでくれない」。

ホット炭酸の主要な販路となるコンビニは、小売りの中でも売り場面積が狭く、商品改廃が激しいチャネル。売れない商品は2~3カ月で棚から外される。温かい炭酸飲料という、ある意味で奇抜な新商品だけに、最初の一口でファンになる消費者を一定数つくれなければ、「一発屋」で終わってしまうリスクも抱えている。

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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