ノーベル賞学者「生産性向上は"昭和"に学べ」 スティグリッツの警告「規制緩和は逆効果」
より動学的な分析は、私たちの経済の多くの側面を支配するようになる巨大企業をますます警戒するように教えてくれます。彼らの市場支配力は、価格を吊り上げるだけではなく、イノベーションを阻害するかもしれません。
ラーニング・ソサイエティが生産性を上昇させる
さて、動学的な観点から見た場合の明るい話をお伝えしましょう。1990年以降の日本のように、生産性の成長率に陰りが見えると、最近でいえばロバート・ゴードンのような典型的な経済学者はすぐに、技術的な可能性の限界に到達した、とする論文を発表しました。
けれども、動学的ラーニング・ソサイエティ(すなわち、すべての先進国)では、先進的企業は、資本集約度と労働者の質が同じ水準である平均的競争相手よりも2倍から3倍の生産性水準を持っています。このような状況では、未利用の可能性がつねに存在することは明らかです。
時には、このような可能性を利用するのに、(サービス業の分権的経営方式か、製造業の中央集権化的な経営か、というような)これまでとは異なる状況に適用できる新しいラーニング方法が必要になってきます。
しかし、やがて生産性成長率は、高い水準に戻ってきます。発展のための技術的な基礎は出尽くしたという考え方は、動学的なラーニング・ソサイエティの観点で見ると間違っていることが繰り返し証明されてきました。
過去200年間の生活水準の目覚ましい向上を実際にもたらしたものは、ラーニング・ソサイエティの構築です。このことを深く考えれば、少なくとも発展途上国においては、聴衆が長い間大事にしてきた教えの一部は、自由貿易の美徳というものでさえ、再考の余地があります。
政府は、何がラーニング・ソサイエティを作るのか、ということに重点を置くべきです。経済学者がこれまで主張してきた標準的な政策のいくつかは、実際にはこれを阻害していたのです。
最後に、長い期間日本にいる私の多くの友人や同僚、そして日本出身の友人や同僚が日本を見て理解する手助けをしてくれました。多くの方々にお世話になりました。
1970年に箱根で行われた会議に故宇沢弘文教授に招かれて日本を訪問したのが始まりで、あれから50年近く経ちます。この間に多くの優れた研究者の方々と交流する機会に恵まれ、経済学についての考えを共有したことはもちろん、日本についての洞察を得ることもできました。私の恩師であり共著もある宇沢弘文教授に謹んで本書を捧げます。
(翻訳:岩本 千晴)
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