ノーベル賞学者「生産性向上は"昭和"に学べ」 スティグリッツの警告「規制緩和は逆効果」

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第2の教訓は、ラーニング・ソサイエティを構築するうえで政府が重要な役割を担う、ということです。市場に任せて自然にできることではありませんし、市場経済では教育や基礎研究に十分な投資が行われません。

第2次世界大戦後の日本は、政府の経済支配─―共産主義の失敗─―とも、制約のない市場とも、異なるやり方を考え出しました。日本は、市場を中心に置きながらも、市場に国や社会を統治させるのではなく、国が市場を統治するモデルを作ったのです。そこでは、政府と市場と社会との有効な協力関係がありました。日本モデルが成功したのです。

問題は日本で生産性が成長していないこと

本書は、経済を再び活性化させるために日本は何ができるのか、今行動を起こすことが、なぜ重要なのかを理解するのに役立つでしょう。なすべきことのいくつかは、日本が過去に行ったことであり、それを21世紀の社会に応用したものです。

世の中は知識社会に移行しています。そこでは、ラーニングの要素は、第2次世界大戦以降の時代よりも、いっそう重要になっています。

とはいえ、20世紀半ばの産業社会におけるラーニングと21世紀の知識社会におけるラーニングには、違いだけではなく共通点もあります。社会は学び方を学ぶ必要がある、という点です。そして、技術進歩や経済構造の変化など、世の中が変わると同時に、学び方も再度学ぶ必要があるのです。

今日本が直面する重要な問題の1つは、生産性―─労働時間当たりの産出量─―が成長していないことです。特にサービス部門でその傾向があります。生産性の成長は、生活水準向上の核心となるものです。かつての日本の力強い経済成長に役立った政策は、日本政府の産業政策でした。当時、政府が技術の獲得や、日本の工業化の発展を奨励していました。

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