省エネを超える「無エネ」ビルは普及するのか 大林組や大成建設が進める次世代ビルの全貌
早くからビルの省エネ化に取り組むのは、大手ゼネコンの大林組だ。同社の技術研究所(東京都清瀬市)は2010年の竣工以来、最新の省エネ技術を多数投入してきた。中でも研究所の心臓部であり、数十人の職員が研究にいそしむ本館テクノステーションは、2014年以来3年連続で通年のエネルギー収支がゼロ、つまりZEBを達成している。
ZEBのメリットは、省エネに伴う光熱費削減だけではない。「自前の電力を確保することで、災害時でも業務を継続できることが重要」(同研究所技術本部の小野島一統括部長)。研究所の敷地は約7万平方メートルに達するが、研究棟の屋上には合計820キロワット、一般家庭の屋根にしておよそ200軒分もの太陽光パネルが並ぶ。
ほかにも、実験機器の排熱を再利用した発電機、さらに3000キロワットもの容量を誇る巨大な蓄電池など、「仮に停電しても1週間は業務が遂行できる」(同)体制を敷く。一般的なオフィスビルなら、非常用の発電機が稼働しても、最低限の通信や照明を1~2日確保するのがやっとだ。
大成建設は「我慢しない省エネ」ビル
同じく大手ゼネコンの大成建設も、2014年に同社の技術センター(神奈川県横浜市)内にある地上3階、地下1階建ての実証棟にてZEBを達成した。
同社が重視したのは、オフィスとしての実用性だ。敷地ではなく建物1棟だけでエネルギーを自給するべく、外壁一面にソーラーパネルが貼られている。
コンセプトは「我慢しない省エネだ」と、設計本部の熊谷智夫設備設計第二部長は説明する。省エネにいそしむあまり、生産性を落としては本末転倒だ。そこで自然光を取り込むなど、光熱費削減と同時に、蛍光灯の光を浴びるよりも健康的に感じられるオフィス空間を目指した。
空調や照明も、感熱センサーを通じて人がいる時にその場所だけ作動する。すでにいくつか問い合わせも来ているようで、「環境への配慮だけでなく、生産性向上の効果も訴えていきたい」(都市基盤技術研究部の横井睦己部長)。
資源エネルギー庁によれば、9月5日までに採択されたZEB実証事業は合計103件。
だが、そのうちの8割以上が発電を伴わないZEB Readyで、本当の無エネであるZEBはわずか7件にとどまる。「2020年からの本格実施はZEB Readyが中心になりそうだ」(担当の資源エネルギー庁省エネルギー課)。
普及にあたってネックとなるのが建設費だ。大成建設がZEB化にあたってのコストを試算したところ、Readyで10%、Nearlyで20%、ZEBを目指すなら50%ものコスト増となり、単なる光熱費削減では割に合わない。
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