働き方改革、「残業代が8.5兆円も減る」の衝撃 雇用者報酬の3%に相当、実質GDPも下押し

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小林氏は「人為的に労働投入量を削減する取り組みとしては、1990年前後に週休2日制が普及して以来の大きな出来事。長時間労働の是正は社会政策として正しい政策だと思うが、それに伴う経済コストをどのように賄うのかという議論をセットでやらないといけない」と指摘する。

厚生労働省労働基準局によると、1987年から1997年にかけて労働基準法が数次にわたって改正され、週当たりの労働時間は40時間(週休2日)に徐々に近づいていった。

当時はバブルのピークと崩壊の過程と重なり、労働時間の削減がその後の経済低迷の一因となった可能性がある。今回は、労働力人口が本格的に減少していく局面と重なるタイミングでの労働時間削減だ。経済成長の源泉は労働と資本、技術水準(生産の効率性)の3つだが、労働投入量(労働者数×労働時間)が減るのなら、その分、資本投入量か生産性を高めないと、経済成長はおぼつかないことになる。

残業代は企業の利益と連動している

厚労省の「毎月勤労統計調査」によると、残業代は景気(企業業績)の良し悪しによって大きく変動してきた。企業の経常利益の動向と比較して見ると、ボーナス(特別給与)よりも、残業代(所定外給与)のほうが、企業の利益との相関が高いことがわかる。

リーマンショック後、企業業績が落ち込むのに比例して所定外給与も減少した。その後、企業業績の回復に伴い、リーマンショック前のピークに近い水準まで所定外給与も増加している。

だが、「この2、3年は所定外給与が景気とあまり連動しなくなっている」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員)という。確かに、2015年度と2016年度は企業業績が伸びているのに対し、所定外給与はむしろ前年比で減少している。

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