フジテレビ、新社長が語る視聴率低迷の要因

73歳、出戻り社長は混迷するフジを救えるか

――これまで印象深かった仕事のエピソードを教えてほしい。

まずは社会人1年目で大阪支社に転勤し5年間営業をしたこと。本当に苦しんだ。当時は視聴率が悪く、スポンサーに会ってすらもらえなかった。毎日通い詰めて名前を覚えてもらって、ようやく係の男性に会えるようになって、そういうのが1年半ぐらい続いた。最後は宣伝部長に会ってもらって出稿してもらえたが。あのつらさは今でも忘れない。

宮内正喜(みやうち まさき)/1967年慶応義塾大学法学部卒業、フジテレビ入社。常務取締役では編成や制作、広報、総務、人事、情報システムなどを担当。経営戦略を統括する専務取締役に就任。2007年に岡山放送社長、2015年にBSフジ社長に就任し、2017年6月から現職。「FNS歌謡祭」など歌番組に愛着を持つ(撮影:風間仁一郎)

秘書室長時代の7年間(1992年から)も厳しかった。テレビ局に入るのは番組を作りたいとか報道記者になりたいとか、イベントにかかわりたいとかでしょ。なぜ秘書室に入らなくてはならないのかと思っていた。つらいときのことは細かいことまでよく覚えている。

やはり、いちばん苦しい仕事をした職場が自分のためになったと思う。新人研修などで「嫌なところに配属になっても一生懸命やろう。10年後くらいにあそこで仕事をしてよかったと必ず思えるから」と言っている。

――ネット配信は自社の「FOD」が中心。競合も増えているが、今後の戦略は?

ネット配信はテレビよりも嗜好が多様化した視聴者がいるので、外部のクリエイター集団なども巻き込んで制作できるようにする。これまで他局になかったものをやっていく。ただ、全体の利益を圧迫しては困るので、プラスになるようなビジネスに早くしていきたい。

FODも現在のように地道に続けていくのがいいのか。どこかで規模を広げることも考えられるし、いろいろな仕掛けがあると思う。ネット配信が見逃し番組だけで、テレビの二番煎じだと思われてしまうと発展が遅れる可能性がある。どんどん新しいものを打ち出していく。

社長が代わったから、ネット展開を加速させる

――ネットを軽視している社員も多いと聞くが。

若い社員では意識の高い人も多い。やはり技術革新に背を向けたら負け。これは経営トップがやってはいけないことだ。苦しいけれど新しいコンテンツを供給し、ビジネスをいち早く作り出すことのほうが大事だ。「発展するかわからないし、儲けになるかわからない」というのはダメ。私はそういう姿勢は取らない。社長が代わったから加速させますよ。

――総務省で地上波の放送をネットで同時配信する議論が進んでいる。NHK(日本放送協会)が2019年に開始したいとの方針を打ち出しているが、どう考えているか。また、民放側にはどんな課題があるのか。

民放各局としては進めていくべきだろう。ただ、日本の放送業界は(公共放送の)NHKと(商業放送の)民放の「二元体制」で発展してきた。NHKがやろうとしているのは、それを根底から崩すような形だ。日本民間放送連盟(民放連)として足並みをそろえて反対している。

地方局については難しい問題だ。現状を考えると、ネット配信は非常に厳しいライバルになる。ただでさえ、圧倒的にケーブルテレビのシェアが高い県もあり厳しい。国の政策として保護のための対策を考えてもらいたい。

――サンケイビルを中心とする都市開発事業が利益の過半を占めている。同事業についてはどんな成長戦略があるのか。ほかの事業も含め、グループの利益の全体像をどう考えていくのか。

今回、フジテレビとホールディングスの社長、会長(嘉納修治氏)をそれぞれ兼務としたのは、テレビだけでなく、ほかの事業も含めたポートフォリオ戦略をスピーディに経営判断できる体制にしたからだ。ホールディングスとしてはトータルで売上高、営業利益を上げることが大事で、フジテレビが苦しいときに都市開発事業が稼いでくれるのはありがたい。

時代によってセグメントの浮き沈みはある。あるときは通販のディノス・セシールが伸ばすかもわからないし、音楽のポニーキャニオンが大ヒットで「たいやきビル」(「およげ!たいやきくん」のヒット後に竣工した新社屋)を作った時代もあった。このセグメントを伸ばすとか、抑えるといった考え方を取らないほうがいいと思う。

今は本当に都市開発がいいし、しかもそのノウハウはテレビ局だけでは持ちにくい。東京五輪や統合型リゾート(IR)構想に対してノウハウを生かし、2段階、3段階ぐらいグループが発展する起爆剤にしたい。

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