VAIO、3代目プロ社長「小規模だから勝てる」

売上高はかつての20分の1、でもそれがいい

そして、第3の事業柱と位置づけるVRは、法人向けの運用・保守・メンテナンスに力点を置く。

「VRは大きく3つ。ヘッドマウント、コンテンツ、運用・保守・メンテに分かれる。ヘッドマウントは変化が激しすぎるほか、コモディティ化も早いのでメーカーとしてはやる意味がなく、自社生産は考えていない。コンテンツは『VR酔い』の問題など専門家でないとできない面があるので他社と提携した。運用・保守・メンテはパソコンやEMSのリソースをうまく使ってやっていきたい」(吉田社長)

日本通信と組んで出した初代VAIO Phoneは特徴のない端末で、大きな失敗に終わった(撮影:梅谷秀司)

吉田社長は、どの分野から攻めるのかは「まだ言えない」という。ただ、「ゲームは手を出さないほうがいい」と話す。出身母体でVRを展開しているソニーへの配慮ではなく、ゲームはヒットする、しないの波があるため、VAIOの規模では無理だという。

一方で、「VAIOフォン」などのスマホ事業は当面継続するが、方向性についてはどうするかまだ悩んでいる最中だ。それはタブレットや2in1(画面を外してタブレットにもなるノートパソコン)、大型化するスマホなどが、3〜5年後にどれだけ使われているか、どのように使われているかが読みきれないからだという。

「わかっているのは、法人向けのキーボード付きパソコンは需要が高いから外せない、ということ。また、家の中や会社の中で持ち運んで使うので、通信ができるパソコンも大事だろうということくらい。そこは当社が得意なところ」(吉田社長)

「エグジットの話はまったく出ていない」

国内パソコン事業を中心に黒字化したとはいえ、2017年5月期は売上高が伸び悩み、まだ200億円に届いていない。国内外で大々的に展開していた2013年3月期に比べれば20分の1以下だ。

「でもそれがいいのだ」と吉田社長は笑顔で言う。「もともと固定費の重い国内パソコンメーカーは、売れないから固定費を下げて、固定費を下げたから売上高が下がって……のいたちごっこをしている。われわれほど小さくなると、あとは上り坂しかない」。つまり、業績は右肩上がりにしかなりようがないというわけだ。

だから、浮かんでは消える国内のパソコン再編話を、なかなか決まらないのではないかと冷ややかに見ている。「誰がイニシアティブをとって、どういう使命感を持って、どんなゴールを掲げてやるかを明確にしないと交渉はまとまらない」。

吉田社長は上智大学外国語学部卒業後に旧日本ビクター(現JVCケンウッド)に入社。2008年に同社社長、2011年にオプトレックス(現京セラディスプレイ)副社長、2012年からエルナー社長を務めた。2017年3月にエルナーの社長を退任。父親の葬儀を終えて「さてこれからどうしようかな」と思っていた矢先にVAIO社長就任の打診を受けた(撮影:今井康一)

世界では中国レノボ、米ヒューレット・パッカード、米デルという世界3強がしのぎを削っている。彼らとどう戦うのか。吉田社長は、彼らと同じリングでは戦わないという。「VAIOは大量販売の会社ではない。たとえば、大手外食とは戦えないが、特徴のある人気小料理店は存在する。製品に裏打ちされたブランドを高める戦略がいちばん合っている」。

VAIO自身が筆頭株主であるファンドの意向でM&Aの憂き目に遭う可能性がないとも限らない。「現状、そんな話はまったくない。ファンドがエグジット(株を売却)するかもしれないと戦々恐々としていても仕方がない、と社内ではいっている。きちんと製品を出して高収益企業にすることが従業員、金融機関、株主の誰もが喜ぶこと。(現状3%台の営業利益率は)8〜10%にできたら御の字」(吉田社長)。

再生ファンドの日本産業パートナーズが出資してすでに3年。吉田社長は「日本産業パートナーズには『一緒にやりましょう。これから5年後を見据えてVAIOのブランド価値向上に邁進する。長丁場になりますよ』と言ってある」(吉田社長)。

VAIO復活の挑戦はブレずに5年後を迎えられるか。「5年なんてあっという間だよ」と吉田社長が笑っていたのが印象的だった。

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