開業25年、独り勝ち続ける東京ディズニーリゾートの”継続力”
1回2時間半程度の研修には、従業員約50人ずつが参加。舞浜地区の埋め立てから、開業、現在に至るまでの歴史を振り返ったうえで、4人のグループに分かれ、それぞれ25周年の抱負を話し合う。この研修には社員はもちろん、約1・7万人のアルバイト(同社では準社員と呼ぶ)、オフィシャルホテルの従業員なども参加する。こうした全従業員が参加する研修プログラムは、同社で初の試みだ。
研修を進めるインストラクターは、準社員を含めたキャストの中から選ばれる。歴史を振り返るビデオのほかは特別な教材はなく、自分たちで考えるスタンスを貫く。研修の最後には、自ら決定した「行動宣言」を紙に書き出し、ボードに掲示する(右写真)。谷口弘寿キャストディベロップメント部マネジャーは「ゲストサービスがうちの最大の強み。25周年に際して、サービスの原点を見つめ直す機会をつくった」とその狙いを語る。
7月9日、閉園時間のディズニーランドにいつもと違うアナウンスが流れた。TDRにはアナウンス一つにも細かい規定があるが、この日は飲食部門で働くあるキャストが、特別に閉園アナウンスを担当したのだ。
1年をかけて25人の夢をかなえるプログラムは、実はキャストにも存在する。この館内アナウンスは、キャストの夢の実現だったのである。
キャスト向けイベントには事欠かない。25周年が始まる直前の4月上旬には、早朝のディズニーランドで決起大会を開催。加賀見俊夫会長や福島祥郎社長も参加して、ディズニーキャラクターとともにオリジナルのショーを行い、モチベーションを高めた。また、キャスト、ゲスト双方の声を集めた100ページ以上に及ぶ冊子を作り、キャスト全員に配付した。
つねにボトムアップ 新しいプロジェクトを開始
「ハウディ!」。ディズニーランドのウエスタンランドと呼ばれるエリア。ここで働くキャストは、訪れるゲストたちにそう呼びかける。ハウディとは、米国の南部なまりでこんにちはの意味。エリアの雰囲気を高めるための一つの仕掛けだ。
キャストの所属が複数の部門に分かれていることもあり、TDRではこれまでエリアとしての取り組みは少なかった。もともとテーマパークは施設開発、運営、外食などの“異業種集合体”。キャストの連帯感は希薄になりがちだ。
1月にスタートした「エリアサービスプロジェクト」では、こうした部門間の垣根を越えて、初めてエリア全体でゲストサービスに取り組む。各エリアのサービス内容は、すべて現場キャストの自発的な提案に委ねられている。
TDRのプロジェクトの特徴は、あくまで現場からの提案がベースになっていることだ。たとえば仲間同士でゲスト対応に秀でたキャストを褒めたたえ合うという「スピリット・オブ・TDR」。1983年の開業以来続く名物キャンペーンだが、事務局以外にも、各部、各組織の末端まで、その担当者がいる。上からの押し付けではなく、つねにボトムアップで取り組む。これがプロジェクトを、一過性のものに終わらせない要因となっている。
「25周年そのものが最大の商材」。この言葉には、こうしたサービスの積み重ねがTDRの最大のウリという自負がある。25周年のテーマとなった原点回帰。この姿勢を貫くことが、ほかのテーマパークの追随を許さない、TDRの継続力に結び付いている。
(週刊東洋経済 撮影:今祥雄)
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